読了したマンガを”ドクリョー”しよう！アルライターがドクリョーした『その着せ替え人形は恋をする』『百姓貴族』など全8作品

今回の選書はお仕事マンガやエッセイマンガなど、日々の暮らしに目を向けた作品が多くなりました。

雛人形の顔を作る「頭師」を目指す五条くんが、コスプレ好きなギャルの海夢に出会うことで変わっていく話。8巻は友情の成分が多めで、この作品は恋愛パートが好きだったので、また好きな要素が増えました。

『鋼の錬金術師』などで知られる荒川弘先生の実録農業エッセイ。7巻で印象に残ったのは、荒川先生視点で描かれる農村ドラマの現地ウラ話。ドラマに出演している牛に荒川先生が感心したその理由とは？また、2021年は12年に1度の丑年！世界の牛が大集合したイラスト、牛の個体識別番号の話、虫やミミズの話、そして農業に欠かせないう○この話まで、7巻も盛りだくさんです！！

「アンサング（unsung）」とは「（業績を）讃えられていない」という意味。病院薬剤師という陰日向に咲く職業にスポットライトを照らした本作は、同じく病院薬剤師として従事する自分にとっても特別な作品です。7巻では、予防接種について一般市民向けの公開講座を開催。反予防接種派の元薬剤師も参加しており、緊張感が走るエピソードです。肝心の内容は、まるでイラスト付きの分かりやすい参考書を読んでいるようでした。こうして薬剤師は、公衆衛生の向上に寄与しているのです！

地元青森から、幼馴染のすーちゃんと共に舞妓さんを目指して上京するも才能に恵まれず、花街の屋形でまかないさんとして働くキヨの物語。元々目指していた舞妓の道を諦めるようにいわれて、自分だったら心が折れて故郷に帰りたくなるような場面でも、料理という自分の貢献できる道を見つけてまかないさんとして舞妓さん達を支えているキヨの姿が美しいです。そして出てくるまかない料理がどれも美味しそうで私も舞妓はんを目指そうかと思いましたがまず性別の壁が…。舞妓さんの生活にも詳しくなれる、はんなり系賄いお仕事マンガです！

フリーランスのウェディングプランナー猪名川こよみは、業界でも凄腕のプランナー。結婚式は夫婦のはじまりだけど、同時に新郎新婦の集大成でもある。どんなものが好きで、何を大事にして、誰に感謝しているのか。それらをぎゅっと詰め込んだものが結婚式で、だからこそ幸せと笑顔が溢れる場になるんだと思わずうるっときてしまいます。自信のなかったこよみがフリーランスとして生き生きと働く姿がかっこいいお仕事マンガです！

ふたりのお子さんと日本で暮らすご夫婦、日本人のじゃんぽ～る西さんとフランス人のカリン西村さん。共著の本作は、1ページ完結のエッセイマンガとそのマンガに関連するコラムがセットになっていて、フランスの文化や価値観を知るきっかけになる身近なエピソードがたくさん綴られています。ごく日本人らしい感覚を持つ西さんの素朴な視点から描かれた本作には、語学学習本やガイドブックには載っていないフランスの魅力が発見できちゃいます！エピソードにたくさん登場するフランス語に奮闘する西さんにも注目です！

架空の学生寮「ともきんす」に暮らしているのは湯川秀樹、朝永振一郎、牧野富太郎などなど、日本を代表する実在の科学者の面々です。『ドミトリーともきんす』は個性的な彼らとのかかわりを描き、その著書を紹介していく読書案内マンガです。普通に生きているとなかなか接点のない科学というジャンル、その第一人者の言葉に触れることで、自らの価値観を鑑みることができます。やわらかいキャラクターたちがあなたを新しい世界へ導いてくれることでしょう。

萩尾望都先生の短編集。表題作『半神』はわずか16ページで結合双生児（身体がくっついた双子）の愛と憎を描いた作品です。短けりゃいいってもんじゃありませんが、装飾的に見せかけて、実は物事の核だけが丁寧に描かれている萩尾先生のマンガに「この人にはどうやっても敵わない」という気にさせられてしまう……。全10編どれも短く、どれも読みごたえがありました。