2月といえばやはりバレンタインデー。
そんな来るバレンタインデーにちなんで、今回のテーマは「サロン・デュ・マンガ 〜甘い恋愛マンガの祭典〜」です。あのチョコレートの祭典サロン・デュ・ショコラに登場するスイーツたちのように甘〜い恋愛マンガを紹介する企画です。
スイート、ビター、ミルク、それぞれ3つの甘さに分けてとっておきの恋愛マンガをお届けしてきた本企画も今回で最後となります。最終回となるミルク編では、従来のジェンダー論や結婚制度に囚われない恋愛マンガをご紹介します。
『ジェンダーレス男子に愛されています。』
表紙を飾るこの可愛らしい登場人物の正体は、SNSでスター的人気を誇るジェンダーレス男子・めぐるくん。そんな可愛すぎる彼氏と、ごく普通の一般的な会社員・わこちゃんが繰り広げるラブコメディ作品です。
本作では、わこちゃんが彼氏のめぐるくんを「推し」と讃えているシーンが印象的。けれど、それは決してわこちゃんの一方通行な愛情表現なのではなく、めぐるくんもまたわこちゃんのことを目一杯愛しているところに思わずキュンとしてしまいます。
そして、めぐるくんよりも体格が良いわこちゃんは彼をおんぶしたり体力的な面でサポートすることが多いのですが、めぐるくんもまた、得意な料理やメイクでわこちゃんをサポートしているのです。
彼氏、または彼女は「〇〇であるべき！」と言った従来の彼氏・彼女像とは一線を画す、めぐるくんとわこちゃんのとってもキュートで対等な関係性は現実世界にももっと浸透して欲しいです。
『青のフラッグ』
高校3年生に進級した主人公・太一は、幼馴染の桃真と同じクラスになります。地味な存在の自分と違って、イケメンで人当たりの良い桃真に対して劣等感を感じてしまい太一は距離を作ってしまいます。
ですが、桃真に密かに思いを寄せる二葉から相談を受けた太一は、その恋が成就するように手助けをするようになり桃真ともまた交流を深めるようになります。
仲が深まるほど、太一は自分の中の二葉への淡い恋心を自覚します。そして、二葉の親友・真澄は桃真がずっと心の憶測に隠している「好きな人」について気付くのです。
人を好きになるということ。その感情のどれもが間違いではないけれど、「好き」という気持ちの難しさを青春のまっただ中にいる登場人物たちを通して鮮烈に描きます。
本作で描かれる「好き」は、恋愛、友情、尊敬、そして同性へ向けられていて、そこにはたくさんの感情が溢れています。LGBTを含む恋愛模様を繊細な絵柄と誠実なストーリー展開で描く『青のフラッグ』は、「好き」が溢れるバレンタインシーズンに読み直したい名作です。
『ヒメゴト～十九歳の制服～』
大学を舞台に、最後の10代を生きる3人が繰り広げる愛と欲望の恋愛群像劇『ヒメゴト～十九歳の制服～』。
高校生まで周囲から"オトコオンナ"として扱われていた主人公・由樹。大学生になってからも男らしく振る舞う由樹ですが、実は自宅でこっそりと昔の学生服を引っ張り出してスカートを履くことで自分の女性性を確認するという「秘密」の儀式を行っています。
そんな由樹が大学で出会ったのは、若い"少女"であることに自分の価値を見出し年齢を偽って援助交際を続ける未果子、そして大学イチのイケメンとしてもてはやされている一方で女性癖の趣味を持つ佳人でした。運命的な出会いを果たした3人は、それぞれの秘密を抱えながらありのままの自分を模索し、その関係性は激しくもつれ合っていきます。
本作は過激な描写も多いのですが、私たちに「男性らしさ」「女性らしさ」の意義を問いかける濃密な一作となっています。
『個人差あります』
物語の主人公はどこにでもいるような一組の夫婦。けれど、夫である晶が突然女性になるという「異性化」が起きてから生活は一変します。
異性化によって望まない性別転換を経験することになった晶ですが、女性になったことで夫婦の関係性やジェンダーギャップについて改めて気付き考えるようになるのです。
また、突如女性になった晶に対して、驚きながらもその事実を冷静に受け止めて「女性」の先輩として夫を受け入れる妻・苑子の姿から女性の強さ実感するシーンは胸を打つものがあります。
マンガならではの「もしも」の世界で、日常に溢れる男女の差、また同性同士だとしても分かり合えない壁について読み解いてみませんか？
『1122』
本作の主人公は結婚7年目の夫婦、妻・相原一子と夫・相原二也。とっても仲良しだけれど、セックスレスで子供なし...。そんな2人が夫婦の間で採用したのは「公認不倫」という制度でした。
二也には妻である一子公認の恋人がいるのですが、どんどん恋人に夢中になっていく二也を見て一子にも心境の変化が訪れます。
本作を読んでいると、既婚の方もそうでない方も「結婚」の在り方について今一度考えさせられます。そして全編を通して私たちに問う「誰とどう生きていきたいのか」というメッセージは、今の時代を生きる全ての人に届いてほしいと思います。
新しい恋愛マンガとの出会い
スイート、ビター、ミルク、それぞれ3つの甘さに分けてとっておきの恋愛マンガをご紹介してきた「サロン・デュ・マンガ 〜甘い恋愛マンガの祭典〜」はお楽しみいただけましたか？
それは、懐かしい青春の日々を思い出す甘〜いものだったり、大人がもう一度恋愛に向き合えるようなほろ苦いもの、そして従来の恋愛像に囚われないまろやかな甘さだったり...。
新しいチョコレートとの出会いを楽しむ「サロン・デュ・ショコラ」のように、あなたにとって新しい恋愛マンガと出会うきっかけとなりますように。
