ソラジマCEOとCOO+GANMA!コンテンツP大いに語る！【前編】『女子力高めな獅子原くん』に見るYouTubeアニメの正体とヒットの条件

コミックスマート株式会社｜安田さん

GANMA! コンテンツプロデューサー。新卒でデジタルマーケティング支援事業を手掛ける株式会社セプテーニに入社。クリエイティブディレクターやアナリストを経験した後、コミックスマート株式会社に転籍。GANMA!でマンガ編集を5年経験したのち現職。

株式会社ソラジマ CEO｜萩原さん

出版社と交渉して作品を獲得する営業をメインで担当。

株式会社ソラジマ COO｜前田さん

YouTubeアニメの制作やクリエイター採用をメインで担当。

一番の理由は『女子力高めな獅子原くん』がTwitterでバズっていたからです。まだ読み切りが掲載される前ですが、作者の相舞みー先生が1話をTwitterに掲載した時、8.6万もいいねが付いたんですよ。

2話以降も1〜2万を超えるいいねが付くので、YoutTubeとも相性が良いだろうと思い『女子力高めな獅子原くん』のYouTubeアニメ化をソラジマさんに相談したことが始まりでした。

制作側としては、僕たちは常にYouTubeのトレンド分析を行っていて、安田さんから相談を受けた時『女子力高めな獅子原くん』ならヒットするだろうという仮説があったのでYouTubeアニメ化に向けて始動しました。

まず、視聴者のキャラクターへのエンゲージメントがとても高いことが理由だと考えています。獅子原くんが視聴者からとんでもなくモテているんですよ（笑）Twitterはもちろん、YouTubeのコメントでものすごくちやほやされているんです。その様子はまるでYouTuberのようで、獅子原くんはマンガのキャラクターでありながらその枠を飛び越えた存在として人気が出たのかなと感じています。

僕も驚いたのですが、小学校低学年くらいと思われる男の子が「獅子原くんみたいになりたい！」とコメントしていて、獅子原くんはキャラクターとしてかっこいいだけではなくて、人間として尊敬を集めているんだなと思いました。

YouTubeアニメのチャンネルって一般的に再生回数は動画の内容に左右されるので、最初は人気でもだんだんまばらになっていくことが多いんです。ですが『女子力高めな獅子原くん』はコンスタントに再生回数が50万〜100万回を超えていて、この背景には獅子原くん自体の人気があるんじゃないかなと思っています。

獅子原くんがここまで視聴者に支持された理由として、YouTubeアニメの制作側の視点からお答えすると、そもそも今のYouTubeアニメには本物のクリエイターが作った本格的なキャラクターが少ないんですよ。そんな時に、GANMA!さんのトップ作品のキャラクター、いわゆるプロキャラクターがYouTubeに登場したというのは視聴者さんにとっても衝撃的だったのではないかなと思います。

まさに！あれはプロキャラクター・獅子原くんが好きな人のために作った動画だったんですよ。獅子原くんの人気がどんなものなのかを社内で試すために公開したのですが、一定数ヒットして反応が良かったので、やはり獅子原くんというキャラクターが視聴者に受け入れられているのだという証明になりました。

まずエログロ系はコンプライアンス的にNGで、ラブストーリー、スポーツ、バトル、異世界系は不向きなので、それ以外のジャンルを候補作として挙げて制作しています。

これらのジャンルはシンプルにネタが尽きるのが早いんですよね。前提として、YouTubeでは”初めて見た人でも楽しめるもの”が求められているんです。スポーツだったらある程度試合が開催されたら終わってしまうし、ラブストーリーは毎回話が進展していくところに面白さが出てくると思うので、初めて見る人には不向きですよね。

『女子力高めな獅子原くん』の場合はまさにネタが豊富だったんですよ。ラブストーリーではなくラブコメディにカテゴライズされ、一般的なラブコメディ作品とは少し異なるんですよね。例えば、好きな人から連絡が来て一喜一憂するような作品ではなく、どちらかといえば日常コメディとして捉えています。

サムネイルだけでキャラの魅力が伝わるかどうかというところもかなり重要です。YouTubeってそもそも再生して見られないと意味がないので、サムネイル1枚で魅力が伝わらないと選ばれないんです。

あとは、キャラクターデザインの観点もありますね。YouTubeアニメのイラストは原作者ではなくてYoutTubeアニメチームの方で作っているんですよ。なので、原作者の描いた絵が作品の売りになっているとYouTubeアニメで再現しづらいので不向きかもしれませんね。

動画を見た後に得られるものがあるのか？というのが重要なポイントになってくると思います。例えば、この動画を見たらスカッとする、尊い気持ちになれる、勉強になる...！という感想を持てるのか。または、キャラクターが好きになれるのかどうかというところも重要ですね。

YouTubeアニメ界隈では、生徒が先生から厳しい校則を押し付けられる話って結構あるんですよ。その中で、この動画は獅子原くんらしさをいかに出すのかが重要でした。例えば、獅子原くんが先生にやり返す！となると本来のキャラクター性が損なわれるので、獅子原くんであれば先生を改心させるような良い方向へ向かわせる...そういうストーリーに作っていくというのは製作陣チームとかなり揉んでやっています。そうすることでキャラクターに対する愛着を持ってもらいやすくなると考えていますね。

シンプルに動画のクオリティがどんどん跳ね上がってきていますよね。イラストはもちろん、セリフの間もしっかりと考えられている動画が増えてきていて、だからこそしっかりアニメとして楽しめるものが視聴者から求められています。

動画のクオリティを上げることの延長線上にOP映像があると思っています。弊社では新たにYouTubeアニメチャンネルを作る時、OP映像が監督の初仕事になるんです。OP映像は、自分を表現する初めての場所になるので一定の予算を積んでクリエイティビティを存分に活かしてもらうようにしています。それが、最近のYouTubeのクオリティが高くなってきているという傾向とマッチしているのではないかと思います。

確かに原作とは異なる表現を加えているものの、原作を改変することは一切しないようにしています。その代わり、原作の中で描ききれなかった部分をYouTubeアニメに抽出するというスタンスで運営しています。

まずは、ソラジマさんの方からやりたい話や登場させたいキャラクターの情報をネタ一覧という形でいただきます。その内容を元にGANMA!編集部と作家さんでチェックを行いNGネタを精査しています。YouTubeアニメ化を作家さんに持ちかけるとやはり原作への影響度をすごく気にされるんですよね。そこに関してはGANMA!にはプロの編集者がいるということ、そしてソラジマさんとの取り組みの中で「原作の世界観はしっかりと保つ」ことを徹底することで、作家さんからの安心と信頼を担保しています。

ソラジマでは、クリエイターさんたちに自分のクリエイティビティを全力で出してもらいたいから、まずは脚本家さんに『女子力高めな獅子原くん』の人気が出るためにどんなキャラクターが必要なのかを徹底的に考えてもらっています。そこで出たキャラクターに対して監督がNGを出すことはまずありません。そしてイラストレーターさんがビジュアルデザインを行い、最終的にGANMA!さんのIP観点で問題がなければOKということになります。最初の工程があるからこそ、濃いキャラクターが生まれるのだと思います。

『女子力高めな獅子原くん』は、YouTubeアニメとマンガでうまく相互補完できていると思います。例えば、YouTubeアニメでオムニバスストーリーをたくさん配信することで、原作の方でストーリーに進展があった時に原作の価値がより高まるんですよね。YouTubeアニメ視聴者からするとキャラクター同士の関係が進展してほしいので、YouTubeアニメの存在によって原作をより読みたくなると思うんです。