「ヒトの本性は一夫一妻制や一夫多妻制ではなく、(ボノボと同じ)乱婚である」
人間の性衝動の根元は何なのか?という疑問に対し、心理学者のクリストファー・ライアンと精神科医のカシルダ・ジュダの仮説を紹介したものが、上記の一文です。
現在、私たち人間は一夫一妻制を採用していますが、これは哺乳類の中でも珍しい種族で、全体の5%に過ぎません。
その哺乳類の中でも「ボノボ」という霊長類が、進化的に一番ヒトと近しい種族とされており、彼らは乱婚(オスとメスが様々な個体と性交渉すること)によって子どもを作っています。
性衝動について考えるとき、遺伝子的に近いボノボを参考にする考え方もあるよね、というのがライアンとジュダの主張であり、どうやら人間が禁断の恋に燃え上がるのは、本能として仕方がないことのようです。
ヒトが一夫一妻制に落ち着いたのは、性感染症の予防や道徳心の発達など、様々な要因があるとされていますが、性的に魅力度の高い対象が現れると、どうしようもなく突き進んでしまうのが恋愛というもの.....
不倫がテーマのドラマが高視聴率を記録したり、芸能人の不倫ニュースが定期的に流れていく世の中。禁断の恋愛というのは不謹慎ながら、コンテンツとしての価値は高いようです。
この記事では、不倫や浮気、道ならぬ恋といった禁断の恋愛をテーマとして取り扱っているマンガを10作品ピックアップしてみました。
目次
『1122【いいふうふ】』
「ダブル不倫」「公認不倫」「妻の風俗通い」という不倫の宝石箱マンガ。
あらすじ
相原一子(いちこ)と相原二也(おとや)は結婚して7年の夫婦。セックスレスの二人だったが、それに伴い「家で生活・外で恋愛」という婚外恋愛許可制を導入し、いちこはおとやの不倫を公認することになった。
この方法は合理的かと思われたが、いちこは徐々にモヤモヤしだし、おとやに対して苛立ちや嫉妬心を隠せなくなる。
「いいふうふ」というタイトルの通り、序盤は夫婦の落ち着いた会話のシーンから始まり、順調な夫婦生活かと思いきや、「夫は今夜恋人と過ごしている」という第1話のオチに、ちょっと待て、とさっそく引き込まれる話の構成。
そこからは怒涛の展開で、おとやの人妻との不倫という、夫婦の真実が明らかになっていきます。
おとやを異性として見れなくなり、やや強引な拒絶によってセックスレスになるいちこ。拒絶されて心が折れ、不倫が認められたおとや。思うようにいかない子育てと冷たい夫に苦しみ、現実から逃れたいおとやの不倫相手・美月。
よくある、酔った勢いでホテルに行ってそのままセフレができたぜ!的なノリではなく、泥沼の関係に至るまでのキャラの背景が丁寧に描かれており、客観的に見て不道徳なことをしていても「まあそういうこともあるよね」と読者を納得させてしまうストーリー展開に、どんどん引き込まれてしまいます。
『恋のツキ』
31歳・適齢期女子の浮気心を生々しく描いた、心をざわつかせるストーリーが見どころの作品。
あらすじ
フリーターの平ワコとサラリーマンの青井ふうたは、ややマンネリ気味の同棲カップル。ある日ワコはアルバイト先の映画館で、顔がタイプな高校生・伊古ユメアキと出会う。
ユメアキとの距離は少しづつ縮まり、ホテルでワコは告白をされる。結婚してくれるであろうドキドキしない彼氏と、恋愛を思い出させてくれた高校生。ワコの心はどちらにぐらつくか、という物語。
『恋のツキ』は浮気の負の部分にフォーカスした作品で、序盤中盤は登場人物に救いがありません。
フリーター・ワコの将来の不安や、一人になったら自分は選ばれることは永遠ないんじゃないかという葛藤、同棲関係の破綻など、生々し過ぎて読者の気持ちをしっかりと沈めてくれます。
また本作の主要キャラである、ワコとふうたは読者の中でも賛否両論です。
出会いたての高校生を、カラオケボックスで気持ち良くしてあげる本能に忠実なワコ。彼女に奉仕させ自分は「めんどくさい」とすぐ寝るふうた。
といったように、主要キャラはとても褒められたような人間性ではなく、読者の気分を一層ざわつかせてくれる、ある意味魅力的なキャラです。
こういうドロドロしたのがたまらない、という人にとっては素晴らしい作品と言えるでしょう。
『あなたがしてくれなくても』
セックスレスから始まる王道の不倫マンガで、レスに陥った男女の心情にフォーカスした作品です。
あらすじ
32歳OLの吉野みちは、夫・陽一との2年間のレスに悩んでいた。
積もり積もったストレスから、先輩社員の新名誠にカミングアウトをしてしまい、お互いの夫婦がセックスレスであることが判明する。以後悩みを打ち明けられる良き理解者として、みちと誠は二人きりで会う回数が増え始める。
みちを女性として見ることができない「妻だけED」の陽一に対し、どうしても夜の営みによって愛情を感じたいみち。
ベランダでハエが交尾している姿を見て、自分の境遇と比べてしまうみちの様子が気の毒すぎて、セックスレスの辛さを痛感させてくれます。
その後久しぶりに陽一に抱かれて喜ぶみちでしたが、しばらくして冷静になり、満たされない自分がいることに気がつきます。
ここでようやく今までの悩みが「セックスをしてくれないこと」ではなく、「日常生活においても陽一からの愛情がゼロになりつつあること」であると悟り、モヤモヤの根源を突き止めるのです。
そこから先輩の誠との不倫によって、主人公のみちが救われ始める流れが爽快で、レスで溜まっていたフラストレーションが解き放たれるように、お互いを求め合います。不倫マンガ万歳!となる歓喜の瞬間です。
『恋は雨上がりのように』
女子高生がおじさん店長に片思いをするという、ありえないファンタジーな作品と思いきや、読者を良い意味で裏切ってくれる爽やかで健全なマンガです。
あらすじ
17歳の女子高生・橘あきら。彼女はアルバイト先のファミレスの店長であるバツイチ45歳の近藤正己に密かに想いを寄せている。
自分は女子高生に「ゴミみたいに思われているんだろうなあ」と考えている近藤だったが、あきらは自分の気持ちを抑えることができなくなり、ついに店長に告白をする。
女子高生におじさんが告白されるというファンタジーな事件は、宝くじに当たるより難しいかもしれませんが、こんなことも許されるのがマンガの魅力です。
本作はそこまでドロドロしたストーリーではなく、むしろ爽快感や清涼感があり、わりとライトに物語が展開していきます。
未成年とバツイチ子持ちの恋愛という、禁断の設定を打ち消しているのは、近藤というきちんとした大人の役割が非常に大きいです。
バイト先では冴えない店長でも、理性的で優しい近藤は、あきらのことを傷つけることなく、むしろ成長させてくれる大人の一人として、彼女の人生の重要な登場人物になります。
ただ、あきらと近藤の関係が進展してくにつれて、若さ故にあきらが暴走していき、近藤が理性のブレーキをかける展開は危険な香りがして、こういうのが好きな人はヒイヒイ言ってしまうこと間違いなしです。
『先生は恋を教えられない』
『先生は恋を教えられない』は、「教師 × 生徒」という伝統的な禁断のラブコメマンガですが、中高生も安心して楽しめる、超健全な恋愛が描かれています。
あらすじ
高校教師・吉高凛子の頭を悩ませるのは、アルバイトのしすぎで学業は怠けてばかりの生徒・荒瀬亮。
日々吉高先生にガミガミ怒られ、アルバイトに勤しむ荒瀬だったが、アルバイトの帰り、アパートの前に待っていたのは吉高先生。二人は教師と生徒という関係以上、恋人未満という間柄だった。
過去に描いたカラートビラです pic.twitter.com/8QjhT5wWp4— 源素水 (@minamoto4696) November 29, 2019
荒瀬が20歳になるまでは付き合わないという約束のもと、放課後に逢瀬を重ねる二人。未成年にわいせつな行為はできない!とキスを拒む吉高先生ですが、ハグはしっかりとしてドキドキしてる先生がたまらなく可愛いマンガです。
とにかく堅物な先生で身体的・心理的なガードも固いのですが、荒瀬ののらりくらりとしたペースに打ち勝つことができず、二人だけの補習授業でイチャイチャしたり、他の生徒がいる中でもこっそり手を繋いだりと、やることはしっかりとやってしまいます。
教師と生徒の恋愛は、不倫や浮気と違って誰も傷つけることがなく、誰に迷惑をかけるわけでもありません。
しかしながら一般的には禁じられた恋愛とされ、バレてしまったら教師に何かしらの制裁が加えられることもあります。
ただ本作のように、密かにそっと大事に育まれる愛は、一般的な恋愛よりもむしろ、純粋で尊いものだと言えないでしょうか。
『ドメスティックな彼女』
『ドメスティックな彼女』は、少年マンガとしてのコミカルさと、大人の恋愛というシリアスさが混在する、ドロドロしているけど甘酸っぱいラブコメ作品です。
あらすじ
唐突に父の再婚が決まった、高校生の藤井夏生。新しい家族と生活することになり、再婚相手が連れてきた子どもが、なんと初恋の先生・陽菜と童貞を捨てた女子・瑠衣だった。一つ屋根の下で始まる禁断の三角関係。
夏生の陽菜(義姉)への片思い、瑠衣(義妹)から夏生への好意、陽菜の不倫というように、禁断の恋愛が盛り沢山のマンガで、少年誌でここまでやるかというくらい過激な描写(性行為、自慰行為、看病として座薬を入れたりなど)で人気を集めています。
鬱屈としたディープな作風ではなく、少年誌らしくエッチでコミカルに話が展開していく一方、恋愛シーンになると官能的に描かれ、登場人物の心情も丁寧に移り変わっていきます。
禁断の恋愛初心者にとっては読みやすい作品です。
『惡の華』
盗んだ体操着から始まる物語で、そこからグチャグチャの思春期を登場人物たちが生きていく、今までに読んだことがないようなマンガです。
あらすじ
クラスの美少女・佐伯奈々子に密かに想いを寄せる主人公・春日高男。ある日の放課後、誰もいない教室で、出来心により彼女の体操着を盗んでしまう。しかし、その様子はクラスの嫌われ者・仲村佐和に目撃されていた。
佐和に脅迫されながら、様々な行動を強制されていく高男。しかしトントン拍子で奈々子との関係が深まり、彼女と付き合うことに。
本作は、中学生の甘酸っぱい恋愛とかそういったものは無く、可愛い女の子の体操着を窃盗するところから物語が始まる「思春期の絶望」がテーマの作品です。
高男をおもちゃとして扱っている佐和の脅迫は徐々にエスカレートしていき、高男の服の下に盗んだ体操着を身につけて奈々子とデートをさせたり、そこで水をぶっかけられたり、読んでいて変な汗をかくくらい、のめり込んでしまう緊張感があります。
佐和に脅迫や暴行を続けられる高男でしたが、しだいに彼女のことを理解したいという考え方が生まれ、奈々子と付き合っているにも関わらず、佐和に気持ちが移っていく高男。
彼女のためなら何でもしてあげたい、そういう危うい状態に陥った高男は、佐和が満足するような「変態」になるために、クラスの女子全員の下着を盗みます。それらを自分たちの隠れ家いっぱいに、祭りの提灯のように飾り、佐和のために生き始めるのです。
思春期とは何か、変態とは何なのか、作品を通じて読者に問いかけるようなマンガです。
『クズの本懐』
登場人物のそれぞれの想いが複雑に絡み合う物語ですが、「相手に愛されたい」「自分のものになって欲しい」という、素直な気持ちが胸にくる純愛作品です。
あらすじ
高校生の安楽岡花火と同級生の粟屋麦は、周囲から見ると理想的なカップル。しかしお互いに、別に好きな人がおり、二人は欲求を解消するための代替手段として付き合っていた。
本作の主要な登場人物は、花火と麦に加え、花火の幼なじみで担任の先生である鐘井先生、麦の元家庭教師であり高校の音楽の先生でもある皆川先生、麦を溺愛する幼なじみのモカ、花火の親友えっちゃんという6人で成り立っており、
花火 × 麦(擬似的な関係)
花火 × 鐘井先生(花火の片思い)
麦 × 皆川先生(麦の片思い)
皆川先生 × 鐘井先生(鐘井先生の片思い)
麦 × モカ(モカの片思い)
花火 × えっちゃん(えっちゃんの片思い)
というように、6人がぐちゃぐちゃの関係で物語は進んでいきます。
一見すると、泥沼で歪んだ話に思えますが、それぞれの本懐(本意に思っていること)は愚直で、相手へストレートにぶつけていきます。
禁断の恋愛と純愛、両方が楽しめる作品です。
『娘の友達』
娘の友達 × 中年男性という「年の差恋愛」を描いた、危険な雰囲気を漂わせるミステリアスな作品。
あらすじ
シングルファザーでサラリーマンの市川晃介は、喫茶店で困っていたアルバイトの如月古都を助ける。後に自分の娘の友達であったことがわかり、喫茶店でのお礼がしたいということで、LINEを交換することに。
娘の不登校、課長としてのストレスなどを、古都にだけ打ち明けることができ、晃介は次第に癒されていく。
🐕娘の友達に惚れてしまったサラリーマンの話🐕 1/12 pic.twitter.com/WZxnaEYAgP— 萩原あさ美 - 娘の友達③2月12日発売です (@hgwrasm) November 9, 2019
「お父さんを元気付けたくて...」古都はそう言って晃介の頭を撫でたり、スキンシップが増えたりして、晃介が高校生である「娘の友達」に惹かれていく物語で、ミステリアスな女子高生・古都が非常に魅力的に映る作品です。
主人公の晃介の心理状態はきちんと描写されている一方で、古都の心理描写が一切なく、年が離れた自分になぜアプローチしてくるのか、晃介と同様に読者も彼女の本心がわからず、モヤモヤさせてくれるのが本作の特徴です。
彼女なりにどんな正義があって友達のお父さんに手を出しているのか、続きがとても気になります。
『BEASTARS』
人間の恋愛が続いてしまったので、最後は「肉食動物 × 草食動物」の禁断の恋愛を描いた、動物版ヒューマンドラマをご紹介。
あらすじ
肉食獣と草食獣が共存する世界。チェリートン学園に通うハイイロオオカミの主人公・レゴシは、草木や虫をいたわる繊細で優しい心の持ち主。
ある晩、草食動物特有の匂いを感じ取ったレゴシは、何かに突き動かされるようにして、襲いかかるように後ろから抱きしめてしまう。
そこでレゴシが出会ったのは、一匹のウサギと、肉食獣としての自らの本能だった。
寝相がちょっと悪くて、終わった後きっちり部屋を片付けて帰る、色々なオスに手を出している魔性のメス。ドワーフウサギのハル先輩が、めちゃめちゃエロいのです。(扉絵では官能的なショットも)
恋愛経験が全くないレゴシは、メスへの耐性、小動物との付き合い方が一切わからず、うまく関係を築くことができないのですが、ハル先輩が色々とリードしてくれます。
しかしそんなハルも草食獣としての本能があり、一緒に食事をする際は、レゴシの猛々しい大きな口を見て、全力で逃げようと足がビクッと反応してしまい、なかなか距離が縮まらない二人。
学園の人気者である、アカシカのルイ先輩もハルと関係を持っており、それに嫉妬したレゴシは、狩猟本能か恋愛感情からくるものか、独占欲がかき立てられ、そこから物語は加速していきます。
もちろんハルとの恋愛だけでなく、部活動などの学園生活、動物世界の社会的な問題など幅広いテーマを扱っており、毎巻楽しめるのですが、やはりハル先輩の大人の色気が半端ではなく、登場シーンにはテンションが上がってしまいます。
不謹慎だ!と叩かれる世の中だけど
不倫などの禁断の恋愛は、関係のない世間の人に叩かれ、今やそれを取り上げるワイドショーや週刊誌自体も叩かれる世の中です。
禁断の恋愛がバレると、社会的な制裁が待っており、今やかなりのリスクになっていますが、マンガという創作の中では、何をするにも一つのストーリーとして扱われるので、自由な世界です。
魅力的な学校の先生やパートナーがすでにいる方といった、関係を持ってはいけない人とのよからぬ妄想をすることも、時にはあるかと思います。そういった妄想を昇華するのもフィクションが助けてくれるはず。
今回は厳選して面白い作品を選んでみましたが、気になった作品があれば是非手にとってみてください!
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