東京 (28)
【どこまでも緻密で、どこまでも人間らしいSF】 転がる小石の1つ、咲く花びら一枚にまで、作者の意思が行き渡っているような緻密さ繊細さが魅力の作品。 宇宙空間のコロニーを舞台としたSF作品なのですが、登場人物の感情や社会設定などが練り上げられているため、現実と地続きに物語の世界に入れます。 ー舞台設定ー ▶︎人類は地球を離れ、衛星軌道に浮かぶコロニーで暮らしていた。 ▶︎地球時代と大きく変わったことは2つ、人口管理のための契約至上主義社会と、「ネオテニイ」と呼ばれる進化した人類の存在。 ▶︎ネオテニイは歳をほとんど取らず何百年も生き、知能なども天才的とされている と、物語の設定はこんな感じ。 なんといっても僕が紹介したい魅力は「繊細さ」! それはざっくり以下3つに分かれます! ①設定の作り込みが繊細 ②キャラの心理描写が繊細 ③ストーリーの展開が繊細 順をおって説明させてください! ①設定の作り込みが繊細 物語が進む宇宙コロニーは契約が絶対の世界です。なぜかと言うと人間が狭いスペースに密集しているので、人間関係から発生するトラブルを抑えようとしているのです。なので友人になるにも恋人になるにもきちっとした契約を結ばないといけません。 そんな特殊な社会ですが「だったら人はこう生きているだろう」「会社や学校はこんな感じだろう」という作者の想像があらゆる所に行き渡っているので、まるで異国のドキュメンタリーを見るようにリアルな気持ちで読むことができます。 ②キャラの心理描写が繊細 登場人物の心理への解像度がめっちゃ高いです。メインキャラは4人のネオテニイで、それぞれ幼馴染の友達なのですが、この4人の感情や思惑が交差し重なる様子も作品の魅力。 大事な人を無くし、その影をずっと忘れないでいる人。その人のそばに寄り添い、力になろうと尽くす人。悲しい事件を繰り返さないため、自分の力の全てを使う人。ただ友人たちの、大事な人の幸せを願う人。 心理への洞察の深さと描写の鋭さは巻を追うごとに増していきます。 ③ストーリーの展開が繊細 そしてそして!SFには欠かせない「この世界の謎」に迫るミステリ展開、これについても本当に緻密に進めれていきます。「明かされている部分」と「隠されている部分」のバランスが絶妙で、どの謎が明かされても「え、じゃあこれはなんなの?」と次の謎が残るのでハラハラしっぱなしです。 「ネオテニイとはなんなのか?」「この宇宙コロニーは誰が支配しているのか?」「地球は今どうなっているのか?」そういった謎が暗闇の向こうでチラチラと現れては消えてもうたまらない。 連載中なのがもどかしいですが、むしろ「次巻を待つ楽しみ」を味わえるとも言える!笑 SF好きなら読んで損なし!
2019年 10月 22日