「週刊少年ジャンプ」で連載中の『チェンソーマン』、驚くほど面白いです。
この魅力をどう伝えればいいのか分からなかったのですが、担当編集の人が「主人公のデンジに学がないのがポイント」と話されていて、すごく納得しました。
この記事では「主人公に学がない」のがなぜ面白さにつながっているのか?を説明してみます。
『SPY×FAMILY』なども立ち上げられた、担当編集者の方のインタビューはこちらから。
『チェンソーマン』のざっくりとした紹介
『チェンソーマン』を読まれていない方向けにざっくり説明すると…。
舞台は「悪魔」というものがいる世界で、公安にも「デビルハンター」という職業があるような感じです。
悪魔は人間に害するので、狩らないといけないんですが、悪魔は超強いので、人の身体を乗っとった「魔人」や悪魔と契約して能力を借りたりすることで、人間側は対抗しています。
つまり、バトルマンガという面でいうと、「悪魔の能力を使って、悪魔と戦うマンガ」とも言えます。
主人公のデンジは学校にもいかず、親の作った借金を返すために極貧生活をしながら、ヤクザの元で民間デビルハンターとして働いていました。
ポチタという悪魔を買っていたのですが、とある事件から、ポチタに命を救ってもらい、融合することに。そして、頭がチェンソーになって悪魔と戦うことになります。
面白い点
で、ここで秀逸なのが「すべての悪魔は名前を持って産まれ、その名前が恐れられているものほど悪魔自身の力も増す。」ということです。
つまり、たとえば「ゾンビ」とか「コウモリ」とか出てきます。
主人公のデンジは、「チェンソー」の悪魔と融合して、頭をチェンソーにして戦うんですけど、チェンソーも人間にとってちょっと怖いですよね。
そして、ここが重要なんですが「悪魔と戦っているときに、恐怖を感じると、相手が強くなってしまう」ということなんですね。
しかし、主人公のデンジは、教育を受けていないので、学がありません。夢や希望もないのです。ちょっといい暮らし(パンにジャムを塗る、とかそういうレベル)をできればいいと思っている。
さらに、ちょっと頭のネジが外れています。難しいことを理解しません。
バカといえばバカなのですが、愚かなわけではありません。ただし、学がないのです。学がなく、難しいことを継続的に考えられないし、考えるつもりもない。
そこが、対悪魔に対しては絶大な力になるのです。悪魔を怖がらないから、悪魔が強くならない。この世界においては、最強になる可能性があるのです。
さらに、少年マンガの主人公なら持っていそうな「海賊王になる」とか「火影になる」「家族を守る」とかの目標があるわけでもなく、「強い奴と戦うことが好き」みたいな、過程を楽しむキャラでもありません。
仲間が死んでもたいして何も思いません。敵への復讐心もあまりありません。
「人と悪魔のどっちの味方だ?」と聞かれたときには、「俺の面倒みてくれるほう」といいます。
デンジには夢も目標も、仲間思いの何か、というのがありません。夢と呼べるようなものは、ちゃんとした寝床で寝れて食事がとれることとか、いいなと思っている女性の胸を揉む・・・くらいです。
これが、この作品を特異なものにしている点であり、デンジの学のなさ、考えのなさが、非情な悪魔たちを倒すための希望となっているのです。
このため、戦いや日常シーンも、今まで少年マンガでは見たことがないような、バカな一面が描かれていたり、どうしようもなかったりするのですが、それがまた斬新でおもしろいです。
希望が描かれており、少年マンガの王道!
「週刊少年ジャンプ」史上、もっとも「学がなくて、バカ」な主人公ともいえます。
たとえば『ドラゴンボール』の悟空だって、学はあまりなく、バカっぽい感じではありますが、強いやつと戦いたい、という点はありますし、心もキレイです。守らないといけないシーンでは世界を守りますし、仲間の死には当然怒ります。
しかし、本当に学がなく、愛情も教育も受けていなかったとしたら・・・。デンジのようになるのではないかと思います。
少年マンガでそういう描き方をするのは奇をてらっているだけでは?と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。『チェンソーマン』は、ちゃんと少年マンガらしい「希望」があるのです。その意味では、王道とすら思います。
2019年には、映画の『JOKER』が話題でした。徹底的に恵まれない環境下、という点は同じですが、それが社会への攻撃になるのではなく、その学のなさ、考えの浅さ、そのものが人類を救う希望になる、、という点で、JOKERとは別の爽快感があります。
というわけで、『チェンソーマン』は、少年マンガの代表作にすらなり得ると思っているので、未読の方はぜひチェックしてみてください。以下のページでは、『チェンソーマン』のより詳しい設定が説明されています。
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