東京 (28)
エピローグから始まる物語。魔王討伐を成し遂げた勇者一行の一人、フリーレン。仲間や周りの人間が老いて生涯を終える何十年という月日も、悠久の時を生きる彼女にとっては人生のわずかな一部に過ぎません。それでも勇者一行として過ごしたほんの10年が、ゆっくりと確実に彼女の生き方に染みていく。平和が訪れた世界で、大きな出来事が起こるわけでもなく淡々と進む旅と会話。でもそこに流れるのは冷たさなんかでは全然なくて、その中でつながっていく出会いと記憶、静かに動いていく感情がジワジワと読者にも伝播して心地いい。時間の価値が小さく観測者になりがちなエルフだからこそ、短い時の中で他者へと何かを残していく人間と関わることで変化が生まれるのかもしれません。
2020年 08月 19日