東京 (28)
「なぜこの抽象的なテーマを1話にまとめられるの?」 とびっくりするくらい話づくりが上手な作品です。 ーあらすじー ■蟲と呼ばれる不思議な存在がいる。それらはこの世界のどこにでもいて、独自の生態で生き、人間に利益をもたらしたり害をなしたりする。 ■蟲師はそんな蟲についての専門家だ。人間に害をなす蟲に対処することもあれば、人里離れたところの蟲を助けることもある。 ■主人公は1人の蟲師。蟲師としても変わり者で、蟲を害虫のように駆除する者も多い中、蟲を殺さず人間にも害を出させない方法をいつも探っている。 ■これは人間の手の及ばぬ存在と、人間が向き合い続ける物語。 どうすることもできない存在とか現象ってあると思うんですよ。 でっかいものだと海とか山とか空とか、小さいのだと言うことを聞かないペットとか、うまく育たない庭の花とか。 そういったどうすることもできないものや、自分のコントロール範疇外のものに対して、どういう姿勢でいればいいのか? みたいなでっかい問いかけをずっとしている作品だと思っています。 すごいのはこの作品が基本的に1話〜3話くらいずつの短編集であること。 大きなテーマを扱う作品は長編になりがちです。なぜかというと、読者にそれを理解してもらうのに時間がかかりますし、理解するため&話を盛り上げるためにバトルや謎解きなどの要素を描く必要があるからです。 なのにこの作品はたった1話で、混じりっけのない問いかけをずっとしている。 蟲が人に利益をもたらす話もあれば、蟲が人に害をなす話もある。蟲と人が共に利益を得ていたのに、徐々に人が蟲を使役しようとして失敗する話もある。 「それぞれがそれぞれに、あるようにあるだけだ」 「こいつらにも都合がある」 といった言葉に象徴される世界の捉え方、世界に対する姿勢みたいなもの、それらは「どういう形であればいいのか?」という問いかけをずっとしている。 何度も読んで、読み解いて、考えたくなる。奥深い作品です。
2019年 11月 15日