おじさまと猫

桜井海 / 著

誰もが傷つき得るという優しい想像力を。『おじさまと猫』お互いの寂しさを埋め合う猫と人の物語

人と猫が互いの寂しさを埋め合う心優しい物語、『おじさまと猫』をご紹介します。

愛情を注いでもらえないときや、ひとりぼっちのときに感じる「寂しい」という感情。それはわたしたちにとって耐えがたい感情ではないでしょうか。

そしてそう感じるのは人だけではありません。猫や犬も人と同じように寂しがったり傷付いたりします。

一度ついてしまった傷は消えない。だけどその傷は埋め合うこともできます。それは同じ種族ではなく、猫と人のような違う生き物であっても。

おじさまと猫とは

『おじさまと猫』はもともとはTwitterに投稿されたマンガ。なんと第一話が15万リツイートを超える(2020年7月現在)ほどに大好評を博し、現在では「ガンガンpixiv」と「月刊少年ガンガン」でも連載されています。

これがその、Twitter民の心を震わせた第一話です。何回読んでも切ない気持ちになります。

第4回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞でも堂々の2位を獲得されています!

ペットショップで1年近く売れ残っていた成猫

のちにふくまると名付けられる猫はペットショップで1年近く、誰にも求められず過ごしていました。

ケース越しにふくまるにかけられる言葉は「可愛くない」「成猫じゃん」と言った心ないものばかり。そんな言葉に傷つき、

どうせ誰も私にゃんて欲しがらにゃい…

と自信をなくしていたふくまる。

そんな孤独なふくまるの元に「この猫をください」という男性があらわれます。

その言葉に対して

返品にゃんか嫌だ! 期待にゃんかさせないでくれ!

と心の中で叫ぶふくまる。他人の愛情を信じられないほどに、深く傷付いていたのです。

そんなふくまるも男性の無条件の愛情をめいいっぱい受けることで少しずつ傷跡を埋めていきます。

大切なものを失ったおじさまの孤独

ふくまるを引き取った男性は神田冬樹(かんだふゆき)というおじさま。彼もふくまる同様に孤独を抱えていました。彼が孤独に苛まれている理由は最愛の妻に先立たれてしまったこと。

言いようのない孤独に苛まれ、その苦しみを誰にも共有できず、満足に眠ることすらもできなくなっていた神田。

神田は一流のピアニストであり、多くの人に慕われています。彼のことを気遣う友人もいます。それでも彼の空虚な心の穴を埋めることができたのはふくまるだけでした。

ふくまるの示す愛情が神田の心休まる毎日を取り戻させていったのです。

友達では埋められないものを動物は埋めてくれるよ

という神田の友人の言葉のように、神田の心の穴はきっとふくまるにしか埋めることができなかったのでしょう。

生き物へのやさしい想像力を

1巻のあとがきに、作者の桜井海先生が猫マンガを描いた理由を述べられています。

ペットショップを通るとたびたび目に入る成猫 言葉では言い表せない気持ちを漫画にしていました

きっと桜井先生にはペットショップにいる成猫の傷付いた感情を、実際に感じていたのだと思います。

作中で無責任に猫の飼育を放棄しようとした母親に、このように言った登場人物がいます。

ふざけるなァ 生き物はおもちゃじゃない 生きているんだ傷付くんだ 責任をとりたくないならお前は金輪際 生き物を飼うなァ!!

生き物が人と同じように傷付いたり悲しんだりすることを、わたしたちはもっと知り、想像できるようになった方がいいのではと感じました。

そういう優しい想像力が、社会から寂しさを減らすきっかけになるのではないでしょうか。その孤独をその悲しさを埋めてあげたい、埋めて欲しいと思う時があるのなら、ぜひ手にとってください。想像し、差し伸べたその手は、決して無駄ではありません。

現在、pixivコミックにて8話まで無料で読むことができます!この出会いを大切にしましょう。

ほんの少しでも、寂しさの少ない社会を

おじさまと猫 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスpixiv)
桜井海/著

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