マンガ大賞2020のほか、数々のマンガ賞を受賞している山口つばさ先生の『ブルーピリオド』。山口先生の出身校である東京藝大の受験をテーマにした美術マンガです。
美術なんてまったく分からなかったのに、芸術の世界に強烈に惹かれていく矢口八虎(やぐち やとら)を通じて、芸術のおもしろさだけでなく、自分の人生との向き合い方を考えさせられる素晴らしい作品です。
本書に触発され、自分でもアートをやってみたいなと思った時に、とても参考になる芸術に対する考え方やつくり方のポイントをまとめました!
目次
- まずはテーマを決めよう!
- 実践編「構図ってなぁに?」
- 実践編「色はどう使う?」
- 実践編「画材はなにを使う?」
- 他の人の作品から学ぼう!
- 自分の作品をつくろう!
- 美術の楽しさは発見すること
- 心に訴えかけてくる言葉たち
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まずはテーマを決めよう!
アート作品をつくるとしても、そもそも何をつくればいいのでしょうか。今日はお花を描きたいかもしれない。明日は自分ちのワンコを描きたいかもしれない。アーティストとして作品を造り続けるにあたり、自分の中につくりたい作品のテーマが決まっているととてもつくりやすくなります。
最初は「自分が何を好きか」に注目してみましょう。
たとえば「一生、そのテーマで制作をつづける」と考えたとしたらどうでしょう。自分が当たり前だと思っていること、自分の「普通」の中に自分だけのテーマが見つかるかもしれません。
ピンとくるテーマがすぐに見つからない場合には、自分が思うことをひたすら書きまくるというのもオススメです。頭の中でいつも考えていること、思いついたことをノートに書き出すことで、自分が「いつも気にしていること」が発見できるかもしれませんよ!
作品をつくっているだけでなく、どこかで発表するとしたら、鑑賞する人々が存在します。美術を伝えたいことを伝えるための「言語」だと考えて、自分の決めたテーマがどうやったらうまく伝わるかを考えてみましょう!
実践編「構図ってなぁに?」
絵を大まかに考えると「テーマ」「構図」「描写」で成り立っています。
構図は伝えたいことを伝えるための武器になりますが、テーマではありません。伝えたいことをおもしろく伝え、人々の心を掴むのが武器です。なので、そもそも伝えたいことがはっきりしていないと、適切な武器を選べないんですね。
良い構図には「流れがある」「テーマに沿っている」「主役に目がいく」「四隅まで目がいく」という特徴があります。最初はこの4つの特徴を意識して作品づくりをしてみるのもいいですね!
本書には名画を幾何学模様で表した構図の参考例も載っています。自分の絵や他の人の作品を見る時には、どんな構図になってるんだろうと気にしてみると勉強になりますよ!
描きやすい構図で手が慣れてしまわないように、カタチだけを使っていろんな構図を試してみるのがオススメの構図練習法です。
上達すると作品づくりももっと楽しくなってきますよ!
実践編「色はどう使う?」
色の使い方がうまい人は、色に対する解像度が高い人だとも言えます。
色同士の関係性や形などで、同じ色でもイメージが変わります。絵は情報量が多いところほど目がいきやすい性質があるので、構図と合わせて色の使い方も練習してみましょう!
混ぜ合わせたり、隣り合う色を変えたりして色に触れるうちに、自分なりの色の使い方が分かってくるかもしれません。
実践編「画材はなにを使う?」
既製品をそのまま使ったり、まるで科学実験のような作品をつくるアーティストも増えてきました。自分が決めたテーマに対して、その素材を使う理由を考えてみたら、作品づくりの視野が広がるかもしれません。
現代美術家の宮永愛子さんはナフタリンを使った作品を制作していることで有名です。ナフタリンは防虫剤などに使われる化学物質です。珍しい画材は使い慣れるのに1年はかかるという話もあるので、奇をてらうために新しい画材を使うのではなく、テーマとの相性を考えるのがいいですね!
本書に書かれていた、絵画は三次元という表現はとても興味深かったです。絵ってなんか平面な気がしてしまいますが、よく画面を見ると、だいたいデコボコしてますよね。筆あとが残っている作品もあれば、まったく筆あとが見えない作品もあります。
自分のテーマを伝えるためにどんな画材が適しているかを考えてみると、いろんなものに興味が湧いてきそうです。
他の人の作品から学ぼう!
本書に出てくる予備校の先生は、作品は作家が出した1つの答えだと言っています。
テーマに対してどんなアプローチをしているか、作品タイトルと合わせて丁寧に観察していくと、自分の作品づくりのためにも学びが多いはず。
作品を見る時に意識することとして、「買う」つもりで見るというのもオススメです。アートコレクターになったつもりで、自分の家に飾るならどんなものがいいか、家のどこに飾ろうかと考えながら見ると、自分自身がどんな作品を好きなのかが分かりますよね。
興味をもつ作品があったら、なぜその作品に惹かれるのかを考えてみましょう。自分でも知らなかった自分自身に出会えるかもしれませんよ!
鑑賞者としてのんびりと博物館をまわった後、表現者として何を描きたいか考えながら見るというのもオススメ。鑑賞者として見ていた自分と、表現者として見ていた自分との違いに注目です!
自分の作品をつくろう!
子どもの頃、太陽の絵は赤い丸に何本か線を引くような描き方をしていました。でも本物の太陽を見ると、線がヒョロヒョロ伸びてることってないですよね。誰かが描いてる太陽の表現を無意識にトレースしてしまっていたのです。
「運命の糸」って言葉があるから、人と人の縁もなんだか「糸」っぽい気がします。世の中にはすでに、〇〇を表すならコレというイメージのものがたくさんあります。自分も本当にそう思うのか、改めて考え直してもいいかもしれません。
アートの世界では、ウサギが青に見えるなら青に塗ってもいいのですから。
これから自分がどんな作品をつくり、どんなアーティストになっていきたいか。ぜひワクワクしながら自分勝手に想いを馳せてみてください。
美術の楽しさは発見すること
作品のつくり方だけでなく、美術に関わる楽しさを教えてくれるのも本書の魅力です。自分で作品をつくり始め、いつも作品のことを考えるようになると気づくことが格段に増えます。
いつも歩いている道路の色の違いや、街路樹の種類が違うこと。古びた壁や錆を美しく感じたり、誰かの優しい心遣いに前より気づけるようになったり。
アートの世界で生きていくのは大変かもしれないです。でも、楽に生きられる世界ってどこかにあるんでしょうか。アートじゃなくても、好きなことだけで生きられるとしたら、あなたは何を選びますか?
仕事に繋がるかどうかはともかく、「これは一生好き!」って言える何かがあるって素敵なことだなぁと思うのです。
心に訴えかけてくる言葉たち
藝大を受験する予備校生たちのナマの言葉にも心を打たれます。
『ブルーピリオド』自体が1つのアート作品として、読者の心を揺さぶる名作なのは間違いありません。
(一位だって獲りたいけど)その前に、自分自身にとって最高だと思える作品はなんでしょうか。
ぜひ、本書から力をもらい、あなたのチャレンジに向かってみてください!
人生という作品が動き出す!
紙本は裏表紙に四コママンガがついているのでお見逃しなく!