3行でわかる宝石の国
その身体は宝石で出来ている。あるものの身体は少女の心のように美しく、ある者の身体は弱い心のように脆い
遙か遠い未来、地上から人間は消え、輝く宝石の身体を持つ28人のものだけがそこにいた
宝石を手に入れようとする「月人」との時折の戦いと邂逅。想像を超えた世界、ここは美しい宝石が暮らす宝石の国
概要
『宝石の国』は月刊アフタヌーンにて連載中の、市川春子先生による初の連載マンガです。主人公・フォスを始めとしたこの物語に登場する存在は、ヒトの形をした宝石たち。この物語は彼らによる、彼らが生きる世界の真実を見つけ出すための軌跡が描かれた作品となっています。
あらすじ
主人公・フォスフォフィライト、通称フォスは仲間の中でも最年少の宝石。なかでもとりわけ硬度が低く、身体が脆い上に不器用なため皆をまとめる金剛先生からは何の仕事も与えられていませんでした。
他の皆は医療や武器製造、そして多くの仲間は自分たちを襲う敵である月人との戦闘をその仕事としています。本当は皆と同じように戦い、先生を守りたいフォス。自分にも役目をくれと訴え続けるフォスに始めて与えられたのは、博物誌作成の仕事でした。
様々な物事をまとめる博物誌作成の任をこなすうちに、ひょんなことから不思議な生き物・アドミラビリス族のウェントリコスス王と会話ができるようになったフォス。そのウェントリコススから彼は、自分達の先祖が「にんげん」という生き物であったということや、その「にんげん」の進化の成れの果てに自分達宝石、そして月人、アドミラビリス族が生まれた、という話を聞くのです。
自分達宝石はなぜ生まれ、どうして今ここにいて、月人と戦いながら金剛先生と暮らしているのか。この世界の成り立ちに興味を持ったフォスは、たった独りでその真相を探すこととなったのでした。
用語解説
宝石
ヒトの形をした宝石の性質を持つ生命体。物語の開始時では28人おり、それぞれ宝石の名称を互いの名前として呼び合っています。ダイヤモンドは硬度が高いが靭性がイマイチ、アメジストは双晶のため双子、ラピスラズリは青色を基調とした体色、といったように自らの名前の宝石に応じた性質が身体的特徴に現れる様子。戦いの際傷ついたりした場合、本物の宝石のように体の一部が欠けてしまうことも。
体内に微小生物がインクルージョン(内包物)として含まれており、このインクルージョンの働きによって、戦いで欠損した場合も欠損部分の欠片があればそれを接合して元通り戻すことも可能です。もし欠片がなくなった場合でも、近い性質の物質を接合すればその部分が戻る事もあります。そのような性質を持つため死ぬという概念がほぼなく、作中で最年長の宝石であるイエローダイヤモンドは数千年を生きているというふうにも言われています。
月人
空から突然群れで襲来し、宝石たちをさらっていく敵です。群れの中央には大きな仏像のような姿の月人が鎮座しており、その周囲を取り囲むように小さな月人たちが守る、という陣形を組んでいることが多い様子。
その正体は、かつて生きていた「人間の魂の変容体」。宝石と同じく彼らにも寿命という概念がなく、人間のような営みを無為に長く続けることを苦痛としていました。その為過去に人間が作り出した機械である金剛先生によって、自分たちを分解し無と安寧の領域に向かわせることの出来る「祈り」の機能を施して欲しいと思っています。
しかし長すぎる年月によって金剛先生の機械としての機能は正常に作動せず、月人の為に彼は祈ろうとしません。彼の機能を取り戻し自分達の為に動く機械に戻すため、彼の大事にしている宝石たちを攫ったり過去に因縁のある存在を送りつけたりと、彼の機械としての情動へ働きかけるような手段を取っています。
登場人物紹介
フォスフォフィライト
物語の主人公、通称フォス。身体は燐葉石で色は綺麗な薄荷色。物語開始時は宝石たちの中で最年少、その上硬度も3半しかなく靭性最下級という脆い身体となっています。その為当初は金剛先生に月人との戦いに参加させてもらえず、医療や製造などの役目も与えられていませんでした。それでも皆の、先生の役に立ちたいと声を挙げ続け、そのうちに先生から幅広く様々な物事を記録する博物誌を作って欲しい、という役目を与えられることになるのです。
その後怒涛の成り行きで、足を付け替えたり腕を付け替えたりしまいには頭部を付け替えたりと大きな身体改造を繰り返し、その流れで内面の性格にも大きく変化が見られるようになります。物語当初は前向きで明るく、それでいて少し頭の悪い発言をすることも多かった彼ですが、身体改造を繰り返すうちに付け替えたパーツの元の持ち主の影響を受け、非常に思慮深く落ち着いた冷静な性格へと変貌を遂げました。
またこれらの身体改造は元々彼の持つインクルージョンが、他の物質と共生しやすいという特殊な性質をもっているからこそ成せる技でもあります。さらにインクルージョンの自我も強く、そのため身体の欠損で記憶がなくなったりすることもあれど、自身が一度持った信念については根強く残り続けているようです。
シンシャ
硬度2、赤い体色をした辰砂の宝石です。身体から銀色の毒液を出せる体質の為戦闘能力も非常に高いのですが、毒液の放出を完全に自分だけでコントロールする事は難しい様子。さらにその毒液に触れると仲間の宝石たちの身体は欠片を繋ぎ合わせることができなくなってしまいます。そのような理由もあり、他の宝石たちとは共に生きられないとたった独りで夜の警護任務を引き受けていました。
そんな彼の存在を知りフォスは、彼に逃げの選択肢ではない、彼だからこそできる役目を探したい、と強く思うようになります。しかしシンシャはそんなものはない、と力になろうとするフォスを遠ざける様子。それでもしつこく自分に構い続けるフォスに少しずつ心を開きながらも、信じすぎて傷付きたくないという思いから常に一定の距離感を保っています。
ルチル
宝石たちの医療担当となっている金紅石。硬度は6で、体色は金紅色と金色のツーカラーになっています。常に白衣を着ており、戦いで傷ついた宝石たちの修復や彼らの接合に使う道具や物質の管理・研究の任務を務める宝石です。
元々は自身の戦闘時の相棒だった存在のパパラチアを復活させるため、宝石たちの医術についての研究を始めていました。基本的に丁寧な物腰で常識人らしい振る舞いを見せますが、時折雑さが垣間見えたりマッドサイエンティストな一面をのぞかせることもある様子です。
金剛先生
宝石たちをまとめ率いるリーダーのような存在の人物。僧侶のような出で立ちをした大柄な男性で、非常に物腰柔らかく落ち着いた挙動の人物ともなっています。しかし時折強烈な眠気に襲われることがあるようで、その際は宝石たちの暮らす学校の中にある本堂で「瞑想」と称して睡眠をとっている様子です。
その正体は大昔に人間に作られた機械。人間たちが滅んだ後も独り生命体として活動し続け、宝石たちの元となる存在と出会い共に暮らすようになりました。自分がどのような存在であるかについては自覚があり、同時に自身のせいで宝石たちが戦わなければいけない、ということについても自覚を持っています。
映像化情報・コラボレーション
テレビアニメ
2017年にMBS・TOKYO MXほかにてテレビアニメとして放送されていました。宝石たちの美しさを忠実に描いた映像美が高い評価を受け、「VFX-JAPANアワード2018」のテレビ番組アニメCG部門で最優秀賞を獲得。また第3回「CGWORLD AWARDS」の作品賞・CGアニメーション部門でも最優秀賞を獲得しています。
TVアニメ『宝石の国』
第3回『CGWORLD AWARDS』にて
「作品賞:CGアニメーション部門」最優秀賞を受賞致しました!https://t.co/050yd3PZkT
この場をお借りして応援して頂いた皆様にお礼申し上げます!
今後とも応援の程、何卒よろしくお願いいたします!#宝石の国 #CGWjp #cg_orange #オレンジ pic.twitter.com/17Yv5egrAL— オレンジ㊗️BEASTARS2期&ゴジラS.P (@cg_orange_inc) December 28, 2017
コラボレーション展示
宝石というテーマ性から、これまで岩手県の「石と賢治のミュージアム」や新潟県の「フォッサマグナミュージアム」などで、作中に登場する宝石が集められた「宝石の国展」という企画展示が開催されています。上記2つの展示についてはすでに終了していますが、今後ももしかしたらどこかで開催されることがあるかもしれませんね。
思い出フォトコンテストに向け2018年春に開催した『宝石の国展』の様子を振り返ってみます😉 講談社&市川春子さん、そして来館頂いた多くの方々に感謝いっぱいでした。君恋いわて がめーさんとの出会いも😊 pic.twitter.com/pByLGfaNl0— 石と賢治のミュージアム(公式) (@ishitokenji) April 30, 2020