『詩歌川百景（うたがわひゃっけい）』は吉田秋生先生が贈る『ラヴァーズ・キス』『海街diary』に続く、鎌倉3部作の最終章とも言える作品です。2019年から月刊flowersで連載されています。
本記事では、過去シリーズの『ラヴァーズ・キス』、『海街diary』のストーリーに触れつつ、『詩歌川百景』をご紹介します！
吉田秋生先生の鎌倉3部作とは
『BANANAFISH』、『夜叉YASHA』などの話題作を発表しつづけ、『海街diary』では、第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、マンガ大賞2013大賞を受賞し、その他小学館漫画賞を2度受賞するなど数々の漫画賞を受賞してきたトップランナー吉田秋生先生が、幼少期に過ごした鎌倉を舞台に描く3部作となっています。
『ラヴァーズ・キス』とは
1995～1996年に別冊少女コミックで連載されており、2003年1月に、平山綾さん、宮崎あおいさん、成宮寛貴さんらの出演で映画化もされています。
男性嫌いのトラウマを抱え、夜遊びに走る女子高生・里伽子（りかこ）。ある日、学校では悪いウワサばかりの朋章（ともあき）と浜辺で出会い、恋に落ちていくが、そのことが里伽子に嫉妬する妹や親友らに大きな波紋を呼んでしまう。高校生のその時期だけ持つ、尖った刃のような危うい心理状態が丁寧に描かれています。
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『海街diary』とは
2006～2018年に月刊flowersで連載されており、2015年に映画化され、綾瀬はるかさん、長澤まさみさん、夏帆さん、広瀬すずさんが主演の4姉妹を演じました。第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、第39回日本アカデミー賞では最優秀作品賞や最優秀監督賞など4冠に輝いた日本の映画史に残る話題作です。
鎌倉を舞台に描かれる、家族の絆の物語。しっかり者の長女・幸（さち）と酒好きで年下の男に弱い次女・佳乃（よしの）、 いつもマイペースな三女・千佳（ちか）。
祖母の残した鎌倉の家で暮らしていた3人のもとに、父の訃報が届いた。そして幼いころに別れたきりだった父が残した “異母妹”と一緒に住むことに。家族の絆を描く、限りなく切なく、限りなく優しい物語。
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2作品の共通点は、「鎌倉」を舞台にしていること、そして2作品に共通して出てくる登場人物、高校生の朋章が出てきます。大人びた高校生のラブロマンスを描いた『ラヴァーズ・キス』では、大人になれていないからこその逃げ場のない現実に向き合う里伽子と朋章の葛藤が描かれ、『海街diary』では、4人の姉妹を通して様々な「家族」がリアルに描かれています。
どちらの作品も、登場人物の抱える悩みや、人となり、周囲との関係性が丁寧に表現されており、様々な人生が交差する群像劇のような描写が深みを持たせています。複雑に絡み合いながらも、緩やかに紡がれるストーリーに引き込まれてしまう味わい深い作品となっています。
舞台を鎌倉から山形に移した最新作『詩歌川百景』
『詩歌川百景』では、『海街diary』の最終巻の番外編に収録されている、3姉妹とすずが初めて会った山形の温泉街で働く、すずの義弟・和樹を中心としたストーリーの続きが描かれています。
山形の山里にある小さな温泉町・河鹿沢温泉の旅館で湯守り見習いとして働く和樹。弟の守とともに、旅館の女将や周囲の大人の思惑に時に守られ時に翻弄されながら暮らしている。
大人たちの抱える過去、そして河鹿沢温泉に数年前に引っ越してきた旅館の大女将の孫娘・妙をはじめ幼なじみ達との友情と恋と人生が静かに紡がれていくーーー
旅館で湯守り見習いとして働く和樹。周囲の大人たちや、旅館の大女将の孫娘・妙を軸に瑞々しく紡がれていく人間模様。『#海街diary』と繋がる物語、開幕！
試し読みはコチラ→ https://t.co/2sMoAP5TXY— 月刊フラワーズ編集部 (@flowers_edit) October 9, 2020
小さな温泉町だからこその濃厚な人間模様
物語は山形に実際にある山里の小さな温泉町・河鹿沢温泉の旅館を舞台に、湯守り見習いとして働く和樹と、数年前に引っ越してきた旅館の大女将の孫娘・妙を中心に、鎌倉とは一見して縁のない走り出してスタートした本作品。すずの義弟である和樹は真面目で、父親違いの小学生の弟・守の面倒をみています。
このシリーズに出てくる物語の中心にいる若者たちは、どこか家庭環境に恵まれなかったり、大人に裏切られた辛い過去をもっています。自分の両親以外の大人に育てられながら、成長していく過程が描かれていることが多いのですが、シリアスな設定とは裏腹に、周囲の大人の優しさや、さりげない気遣いにホッとする作品となっています。
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鎌倉3部作なので、今後の展開次第では『ラヴァーズ・キス』や『海街diary』のキャラクターも出てくるのかもしれませんし、舞台が鎌倉に移っていくのかもしれません。複雑に絡み合った人間関係や緻密な心理描写にハッとさせられる、吉田秋生先生の作品ならではの今後の展開に期待が膨らみます。
『詩歌川百景』は第1巻が発売されたところなので、じっくりゆっくり物語が成長していく様子をオンタイムで体験したい方にお勧めの作品です！
