3行でわかる鬼灯の冷徹
亡者が叫び、鬼は冷徹に鉄棒を振るう、そんな地獄のイメージでまだ消耗してるの?
地獄を束ねる超有能な第一補佐官鬼灯と愉快な仲間達の日常を描く
地獄好きのための地獄最高な地獄コメディここに開幕!
概要
『鬼灯の冷徹』は講談社発刊『モーニング』にて2011年から2020年まで連載された江口夏実先生による作品です。主人公である鬼・鬼灯の周りを取りまく地獄の仲間たちとの日々を描いたブラックコメディ作品で、過去には「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」で1位を獲得。また同じく2012年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門にて、審査委員会推薦作品にもノミネートを果たしました。
単行本は全31巻、2020年1月には累計発行部数1400万部を突破しています。
あらすじ
本作の主人公・鬼灯は地獄で閻魔大王の第一補佐官を務める有能な鬼神です。戦後の人口爆発や悪霊の凶暴化によって、地獄は亡者で溢れ返りこれまでにない人手不足に陥っていました。その中で、様々な伝承のイメージとは正反対のどこか抜けた所のある閻魔大王や、個性の強い極卒たち。さらにはいろんな形で地獄や鬼灯本人にちょっかいをかけてくる妖怪や悪霊、そして時には海外のモンスターまでもが訪れてきて、今日も地獄は大忙し。そんな地獄での鬼灯を中心とした、たくさんの登場人物のドタバタな日常を描いたコメディ作品となっています。
登場人物紹介
鬼灯
本作の主人公。閻魔大王の下で第一補佐官を務める鬼神。鋭い三白眼で額に一本の角が生えており、普段は黒い浴衣を身に纏っています。非常に有能な仕事のできる補佐官ですが、それ故にかなりの仕事中毒であったり、その分使えない獄卒や時折ポンコツになる閻魔大王への不満が諸々常に絶えない様子。
一方で自身の現在の役割については黒幕的なかなり美味しい役目であることも自覚しており、元々の冷静沈着で頭脳明晰な性格も相まっていざという時には誰に対しても容赦をしない姿勢を取る事も。そのようなある意味で地獄の鬼らしい部分も相まって、周囲の人間からは恐れや畏怖を持たれつつも基本的には大きな信頼を寄せられています。
閻魔大王
日本の地獄の最高責任者。数多の伝承などで伝えられているとおり非常に大柄な巨躯をしているものの、裁判の仕事中以外は基本的にはのんびりとした大らかな性格の人物。時折仕事をしたくない、と愚痴を零したり駄々をこね、鬼灯に叱咤激励されていることも。
地獄の統率者でもありながらも憎めない呑気な所やその地位に相応しい器の広さを垣間見せる所もあり、それらから地獄の獄卒たちにも厚く慕われている人物でもあります。
唐瓜・茄子
地獄で獄卒を務める2人の鬼。小鬼の新人獄卒ですが、幼く見える外見の一方で2人共中身は普通の青年ぐらいの年代です。
自由奔放な茄子にしっかり者の唐瓜が引っ張り回されるような関係性でよく一緒に行動していることが多く、セットで「地獄のチップとデール」とも呼ばれているんだとか。唐瓜が吊り目で二本角、茄子が垂れ目で三本角という見た目をしています。
シロ・柿助・ルリオ
物語の冒頭で鬼灯と一悶着あった、桃太郎が連れていた3匹。騒動の後に桃太郎は鬼灯の斡旋により、桃源郷の白澤の元へ、動物3匹は地獄の獄卒としての適性があると判断され地獄へ就職することとなりました。犬のシロは天然で好奇心旺盛な性格。猿の柿助は思慮深く慎重派ですが、その性格には数百年前に、『さるかに合戦』という物語に記された当事者であることも関係している様子。雉のルリオはかなり自分に自信を持っているプライドの高い鳥でありながらも、桃太郎や鬼灯を信頼している面を時々垣間見せています。
お香
衆合地獄の主任補佐を務める女性の獄卒の鬼。妖艶で色気のある雰囲気を持っており、着物の帯の代わりに2匹の蛇が常に彼女には付き従っています。穏やかで物腰の柔らかな女性で「女性から嫌われない性格」であることも加味し、非常に獄卒としても有能な人物ともなっている様子。鬼灯とは実は彼がまだ現在の地位となる前からの、かなり古い付き合いの仲なんだとか。
白澤
地獄とは反対の天界(天国)の一角、桃源郷に住む神獣。普段は人の姿をしており白を基調とした衣服をまとい、にこやかで飄々とした性格の細目の青年。しかしその本性は非常に女性に対してだらしのない一面もあり、その悪い癖を引き金として鬼灯と昔一悶着あったことから、互いが互いを目の敵のように嫌っており顔を合わせるたびに大喧嘩を繰り広げています。
普段は漢方の権威として天界で漢方薬局を運営しており、訪れる客人に漢方を処方したり健康へのアドバイスをしている様子。また芸術センスが壊滅的に無く、自身の描いた猫好々(マオハオハオ)というキャラクターを妖術で具現化した際は、周囲に「呪われた猫」と呼ばれたりもしていました。
物語の舞台、楽しい(?)地獄ってどんなところ?
本作の舞台となっている地獄。生前悪い行いをした者が落ちる場所と言われていますが、実は一口に地獄と言っても様々な場所があるのをご存知でしょうか?
本作では様々な諸説の中でも、日本の地獄は八大地獄と八寒地獄に分かれており、その中でもさらに272の細かい地獄のエリアに分かれている、というものが採用されています。ここでは作品に登場する地獄の中でも、いくつか代表的なものをご紹介しておきましょう。
等活地獄
八大地獄の1つであり、暴力による殺害や虐待などといった殺生を生前行ったものが落ちる場所。またその対象は人間だけでなく、動物に対して行った者も同刑に処されます。そのような動物を虐めた罪で落とされる不喜処地獄というエリアもあり、作中の前半で登場する動物たち(犬のシロ、猿の柿助、雉のルリオ)がここの獄卒として働いています。
衆合地獄
八大地獄の内、生前に邪淫罪などを犯した性犯罪者などがメインで落ちる地獄群。罪人に罰を与える獄卒のうち7割が女性で、男性は筋金入りの硬派か軟派すぎる者しか就けないんだそう。ある意味男性にとっては、地獄界隈の中でも最も恐ろしい場所とも呼ばれています。鬼灯の昔馴染みであるお香は、この地獄の獄卒で主任補佐を行っています。
大叫喚地獄
八大地獄のうち、生前は詐欺師や悪徳政治家であった嘘つきが落とされる地獄。似たような名前に酒乱の者が落ちる叫喚地獄がありますが、激しい責め苦によりそこよりさらに大きな阿鼻叫喚がよく聴こえる、ということでこの名前になっているんだそう。固いくちばしを持った鳥に一生突かれ続ける金剛嘴烏処や、物語『かちかち山』に登場した白兎である芥子が極卒として所属する如飛虫堕処などがあります。
八寒地獄
八大地獄が業火のイメージがあるとすれば、こちらの八寒地獄は文字通り極寒の地獄。雪鬼や雪女、ナマハゲ、ペンギンなどの雪国に縁の深い者たちが獄卒として働いています。一応閻魔大王と鬼灯の管理下にある地獄ではありますが、基本的に現場の人間に様々な管理を任せている様子。彼らがきちんと任務を遂行しているか、時折鬼灯が偵察に訪れているようです。
メディアミックス情報
テレビアニメ1期は2014年1~4月に放送。2期は2017年10月~12月、その続編も2018年4月~7月に放送されていました。現在一部動画配信サービスでもアニメについては見られるようになっています。
これは“地獄”のお話。
亡者への叱責、獄卒の指導、現世視察……
万年人手不足の“地獄”で、頼りない閻魔大王の補佐を務める鬼灯は常に大忙し⚡
そう、これは、騒々しくも楽しく愉快な
地獄の日々の物語である—❗️
『鬼灯の冷徹』配信スタート👹#ネトフリアニメ pic.twitter.com/9DFmmd8opz— Netflix Japan Anime (@NetflixJP_Anime) September 23, 2020
またスピンオフ作品として、月刊雑誌『なかよし』にて連載されていた柴もなか先生による 『鬼灯の冷徹 シロの足跡』が同じく講談社から全5巻で発売となっています。
作者紹介
コロナの影響で開催中止となってしまった完結記念原画展のキービジュアルのメイキング動画です。江口先生のカラー原稿が生み出される過程をお楽しみください。 pic.twitter.com/e9D2nJa96Y— 「鬼灯の冷徹」公式アカウント (@hozukiofficial) September 24, 2020
本作の作者、江口夏美先生は元々女子美術大学芸術学部絵画科の日本画専攻を卒業。また幼い頃から『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』、『まんが日本昔ばなし』などにとても親しんでいたことが、この『鬼灯の冷徹』が生まれた原点にもなったことを明かしています。尊敬するマンガ家に水木しげる先生と岡田あーみん先生を上げており、作品の独特なコメディテンポは岡田あーみん先生の作品の影響も強いと語られています。