マンガの主人公は、いつだってカッコいいものです。現れる強敵をなぎ倒す姿、幾多の困難を乗り越えるその姿に勇気を貰えます。
その影で、様々な理由で道半ばで去っていったキャラクターも存在します。彼らの存在無くしてマンガを語ることはできないとすら思うのです。
今回は、そんな諦めることを選択したキャラクター達に焦点を当てて行きます。
チャッキー / 『あひるの空』
高校バスケットボールを舞台に弱小チームの成長を描くマンガ『あひるの空』に登場する主人公、車谷空の1つ上の先輩です。苗字が茶木なのであだ名がチャッキーです。
元々バスケ未経験者でしたが、次第にバスケの魅力にハマり、厳しい練習にも耐え部員数の少ないチームのメンバーの1人として奮闘していました。
しかし、新入部員が入って来る少し前のタイミング。チャッキーは自分と同じタイミングではじめた同級生の成長の早さや、これから未経験の自分より上手な後輩が入って来ることで今の自分の居場所がなくなってしまうのではないかという焦りを覚えます。
監督にもその胸の内を見透かされ、ポジションは保身の居場所ではない、と厳しい言葉を浴びせられます。
それ以後、次第に部活に足が向かなくなるチャッキー。
1日、2日、3日と、部活をサボる日が伸びるにつれ、チームメイトを避けてしまうようになります。
本当は、新入部員なんて入ってこなければいい。どんどん上手くなるチームメイトを嫉妬して、妬んでしまう。そんなことばかり考えてしまう弱い自分を否定したい。チャッキーは自分の感情と必死で戦っていました。
醜い感情に支配された自分を否定したかった。でも、それが出来なかった。悔しさと、情けなさが混じりあった感情が彼を支配していました。
チャッキーは、結局そのままバスケ部を辞めてしまいます。
ただ、この悲しいエピソードにも救いはちゃんとあって、チャッキーの仲間、後輩が、部活を辞めてしまった後の彼を避けていないということです。
部活を辞めた後も、関係は続くのです。そこに、彼らの絆の深さと、相手と向き合い続ける強さを感じます。
部活を辞めた後、元チームメイトに対して後ろめたい気持ちを持ってしまう経験、筆者も部活を途中で辞めてしまったことがあるので痛い程わかります。
そんなチャッキーを気遣いロッカーはいつまでも開けておくと、帰る居場所はちゃんとあるぞと伝えてくれる同級生のナベ。
そしていつも通りに、不自然に辞めた人間を避けずに正面から接する空に、チャッキーは間違いなく救われていた。そう思います。
※このエピソードはあひるの空28巻に収録されています。未読の方はとりあえず1~28巻まで読んでみてください🏀
野島貴史 / 『働きマン』
え、野島?誰?という方も多いことでしょう。彼は週刊誌編集部を舞台にした仕事マンガ『働きマン』に登場した単発のキャラです。
本編に登場したシーンは少ないのですが、筆者の中では鮮明に記憶されています。
彼を覚えているきっかけになった印象的なコマがこちら。
本作の主人公、松方弘子が鬼の形相で追っかけているのが自分の仕事から逃げ出した男、野島君です。
元々、契約社員として勤務していた野島君。仕事の速さと無理めなスケジュールでも積極的に仕事をこなす姿勢から、社内では重宝されていました。
ただ、彼は葛藤していました。いつまで経っても署名記事(自分の名前が掲載された記事)ひとつ書かせて貰えない。上司には「もっと使えるの書いてこいよ」と言われる始末。
ある日、ストレスが頂点にまで溜まった彼はものすごい差し迫った仕事をバックれます。
束の間、全てのストレスから解放され、悠々自適な時間を過ごす野島君。
しかし、次第に自責の念に駆られ、今からでも何か手伝えることはないかと、頭を下げに編集部に戻ります。
そこからのこれです👇
仕事を投げ出した野島くんにキレる松方に鬼の形相で追いかけられ、彼は結局またしても逃げてしまいます。
情けなくもあり、なんだか共感してしまう部分もあったり、『働きマン』に『働けないマン』が登場してくるその対比が面白く、是非未読の方には読んで貰いたい回です。コミックス2巻に野島君の話は収録されています。
中村 平 / 『アオアシ』
Jリーグユースチームを舞台に描かれるサッカーマンガ『アオアシ』に登場する、プロを目指してギラギラしている連中ばかりの中、気の良い兄ちゃんと言った風情で主人公の青井葦人(あおいあしと)にも優しくアドバイスしてくれる姿が頼もしい、こんな先輩いて欲しい!という、ヘアバンドがトレードマークのキャラが中村平です。
チーム内でもその人柄と面倒見の良さから信頼を置かれている平。しかし、彼はサッカーでプロになるという夢を諦め警察官を目指すと、突然チームメイトに引退を宣言します。
唐突な宣言に戸惑う仲間達。当然説得を試みますが、平の意思は固く、彼はリーグ戦で首位を争う強豪、船橋学院戦を最後に引退することになります。
自分の夢をチームメイトに託した平。小さい頃から夢見て来たプロサッカー選手という道、それは決して遠くない場所にあった筈なのに。何故ここで諦めてしまうのか。
筆者の想像ではありますが、平は、共に戦ったチームメイトとの実力差を感じ、自分はどれだけ本気でやってもこのレベルには到達できない、と身をもって体感したのでしょう。
自分の人生を捧げて取り組んできたサッカーで自分の限界を思い知らされる。言葉では言い表せないくらい悔しいに決まってます。
それでも、平は自分の負けを認めて、自分で終わりを決めて線を引いた。この決断を下せたことは平の強さでもあり、引き際の美しさをも感じます。
最後に、長年お世話になったグラウンドに一礼する平。
アオアシの読者はきっと平のことを忘れないでしょう。
プロの世界で輝いている一握りの選手達は、平のように夢半ばで競技から去った選手達の想いを全て背負って戦っている事を気づかされます。改めて厳しい世界だと痛感させられます。
諦めるという言葉は、それだけ賭けてきたからこそ
「諦める」という言葉は、どうしてもネガティブな側面を感じてしまう人が大半ではないでしょうか。ただ、1つのことを必死になって取り組んだからこそ、その道を降りる時に「諦める」という重みのある言葉を人は使うのかな、とも思うのです。
彼らが見せてくれた挫折した経験は、きっと誰もが過去に抱えた記憶があるのではないでしょうか。だからこそこのようなエピソードは、これほどまでに私達の心を揺さぶるのでしょう。
辞めた後も、人生は続きます。
眩しいくらいに輝くキャラクターとは対照的ですが、彼らもまたマンガの素晴らしさを伝えてくれる大切なキャラクターです。
様々な観点から、マンガの魅力を再認識してみてくださいね。
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