このマンガの「理想の教師像」がスゴイ!を熱く語ってみた

「理想の教師」というのはマンガでもドラマでも永遠のテーマといえます。教師に対しての想いはとても特別なものですよね。尊敬したい、ちゃんと指導されたい、見てもらいたいという気持ちや、何もわかってくれない、ちゃんとやってくれないという恨みもあったり・・・。

だからこそ、マンガで描かれる理想の教師像には魅力を感じるのだと思います。

そこで、この記事で「この理想の教師がすごい!」というマンガをいくつか紹介したいと思います。

暗殺教室

2016年までジャンプで連載され、アニメ化もした大ヒットマンガです。

暗殺教室
松井優征/著

タコのような謎の生物である「殺せんせー」とE組の生徒たちの物語です。

防衛省から派遣した人物が、タコのような生物を紹介し担当だといい、「この化け物を来年の3月までに殺してくれ。報酬は百億円」と言われます。殺せなければ地球を破壊する、とも言われます。

落ちこぼれ集団であるE組は、化け物を3月までに殺さないといけません。

殺せんせーはマッハ20で動き、弾丸の雨もかわせることもでき、軍も政府も誰も殺せませんでした。しかし、なぜか殺せんせーは3年E組の担任になり、生徒たちには殺すチャンスがあり、ということで、奇妙な先生と生徒の関係が始まります。

このマンガのすごいところは、あらすじを読んだだけでもわかる、設定の奇抜さです。先生を暗殺しないといけない状態で勉学もがんばるという異常な環境です。

しかし、これは生徒目線でみると本当に変なことなのでしょうか?

思春期の学生目線だと「先生を頼りたい」という気持ちと「先生を殺したい」という矛盾した持ちがあったりしないでしょうか?

暗殺教室では、「殺せんせーは常に生徒をよく見て、生徒に親身になってくれる」という先生との信頼感は作中でどんどん構築されていき、一方で生徒全員が成長していくことで、殺せんせーを殺すためのスキルが身についていきます。

基本的に明るい雰囲気で、ギャグ要素も多く、暗殺といっても悲壮感や絶望感はあまりありません。純粋な教師ものとして読める普遍的な名作です。

ここは今から倫理です

倫理の先生が主人公というのは他ではあまり見たことがありません。倫理教師の高柳と、倫理の授業を受ける生徒との、それぞれの関係が1話完結ですすんでいきます。

ここは今から倫理です。
雨瀬シオリ/著

1話目で、高柳が「倫理は学ばなくても将来困ることはない」と言い放ちます。「この知識がよく役に立つ場面があるとすれば ── 死が近づいた時とか」と淡々と言い放ちます。

冷徹な目で淡々と話す教師に見えますが・・・女性生徒が男子生徒数名に暴行にあっているところを「合意ですか?」と聞き、「ちがう・・・」といった途端に、すぐに助けに入ります。

相手殴られた時に、高柳はこう言い放ちます。

やめなさい。私は貴方を殴れない。異性の生徒に至っては、落ち着くようにと背をさすってやる事もできません。セクハラになってしまう。お願いします。暴力はやめて下さい。

引用元:ここは今から倫理です(1巻)

そして男子生徒が去ったあとに「貴方が・・・倫理の授業を選んでくれてよかった。倫理は人の心に触れ、自分の心に触れてもらう授業です。貴方の頭をなでて慰める事はセクハラになってしまいますが・・・。貴方の言葉を聞き、貴方の心に触れ、慰めることはできる」

といいます。

どうですか・・・?すごくないですか?倫理の授業の延長で、生徒と向き合います。

2話し目では、レイプされた女子生徒が自殺しようとしたところをとめるのですが、そこでは、他の女子生徒が「死ぬ事に・・・命の重さに比べたらちっちゃい事じゃないか!」というのですが、それに対して、必死な形相で

恋に破れても・・・家族が死んでもいじめられても就職に失敗しても仕事がイヤでもお金がなくても人生が・・・退屈でも!それがどんな理由で命に換わる程重い絶望になるんです!

引用元:ここは今から倫理です(1巻)

といいます。

高柳も人間なので、全く完璧ではありません。オロオロしたり動揺したりもよくします。しかし、倫理を通じて、生徒をなんとかしようとするシーンがたくさんあります。それらの言葉はどれも素晴らしいです。

このままいくと、引用量が半端じゃないことになってしまいそうなので、ぜひともマンガを読んでもらいたいです。

吊金先生

吊金先生は、「すべてお金で解決する」先生の話です。事故のため、顔が包帯でぐるぐる巻きになっており、見た目はとても不気味です。

吊金先生
加茂ユウジ(著)

出席すればお金をあげる、良い成績ならお金をあげる、暴力沙汰に巻き込まれた生徒がいれば、お金で解決する。お金で無法ものや劇団員を雇い、生徒に害をなすものをハメたり・・・と、とんでもない行動をします。

しかし、一貫してあるのが「生徒を守りたい」という一心。多くの生徒が吊金先生によって、助けられていきます。

なぜ吊金はお金で解決しようとするのか?そのお金はどこから出ているのか?本当に生徒を守りたい教師なのか?裏はないのか?という疑問が出てきますが、それらはすべて解消されていきます。

奇抜な設定に見えますが、読み終わってみると、正統派の教師ものに思えてくるから不思議です。全2巻で完結済なので、ぜひとも読んでみて下さい。

亜人ちゃんは語りたい

「亜人」と呼ばれる、ヴァンパイアや雪女、デュラハン、サキュパスなど、普通の人間とはちょっと違うものたちが、「個性」程度のものとして、一般社会に溶け込んでいる、という設定の『亜人ちゃんは語りたい』です。

亜人ちゃんは語りたい
ペトス/著

溶け込んでいるといっても、やはり珍しい存在である亜人。主人公であり、生物教師の高橋鉄男は、昔から亜人に興味が強くあったが、学校内で亜人と多く関わるようになります。

それぞれ、思春期の悩みと同じように、亜人ならではの悩みがある生徒や教師たち。

まつなお

このコマにあとあと泣かされるとは思ってなかった

亜人ちゃんは語りたい

亜人への興味も強くありつつ、個性が強い亜人たちの問題にも向き合っていく・・・という教師ものといっていい作品です。

けんすう

亜人ちゃんは語りたい

ちなみに、初期では「亜人という題材を使いつつも、やっていることは思春期の女の子たちの悩みと向き合う」という教師ものだというイメージだったのが・・・

だんだんと本格的に「亜人たちの身体や、その不思議さはどうなっているのか?」という点を科学的に説明するようになってきていて、そのロジックがかなりしっかりしていてですね。

話が非常に立体的になってきて、めちゃくちゃ今おもしろいんです・・・。

二月の勝者

二月の勝者は性格にいうと教師モノとは言えないかもしれません。題材としては中学受験の塾の話だからです。

二月の勝者 ー絶対合格の教室ー
高瀬志帆/著

小学生のママたちの間で話題沸騰で売れているらしいのですが、中学受験の情報がリアルで、かつ役に立つと評判です。

君達が合格できたのは、父親の「経済力」。そして母親の「狂気」

引用元:二月の勝者

と言い放つ主人公の黒木。彼は、中堅受験塾「桜花ゼミナール」の吉祥寺校にの新校長としてやってきたやり手なのです。

受験のプロであり、経営者という立ち振る舞いです。生徒の笑顔のために、とか、生徒の学力をあげたい!という熱意ではなく、親のことをスポンサーと呼び、生徒のことを金脈と呼びます。

この作品が魅力的なところは、やはり、中学受験を通じた親子の関係、家庭の問題をちゃんと描いているところ。そして、そこに講師が介入することもあるのですが、ある意味「中学受験に合格をする」というところにフォーカスされたものになっています。

個人的にはここがよくて・・・。生徒のために耳心地のいいことをいって、救おうなんてしなくていいわけです。塾にとっては、生徒はお客さんであるし、生徒は、中学受験に受かるという目的のために通っている。

あくまでビジネスの付き合いとも言えるわけです。黒木も「塾講師は教育者ではなくサービス業ですよ」といっています。

そこの一線を本作ではちゃんと意識されているように見えるんですね。しかし、変な話、それがあるからこそ、子供も成長できたり自分ごととして勉強できたりする気がするんです。

この作品では、中学受験を「子供にいやいや勉強をさせている」という形で描くのでもなく、だからといって手放しで中学受験を勧めているわけではなく、中立に書かれています。受験はいい、悪いではなく、「サッカーをがんばって成長する子がいるように、受験をがんばって成長する子がいてもいいよね」というのもあるかもしれません。

様々なデータなどが詰まって大人気の本作。ビジネスパーソンでもお子さんがいる方にもオススメです。

ということで

教師ものはまだまだ名作だらけです。最後に「この作品もやばいよね」というのをまとめて紹介しておきます。

ごくせん
森本梢子/著

極道の孫娘であるヤンクミが型破りな先生になるお話。ドラマが人気でしたね!

ROOKIES
森田まさのり/著

今どきストレートな熱血教師が野球部を再建する話!こちらもドラマが人気でしたね!

GTO
藤沢とおる

『湘南純愛組』の続編的な立ち位置。伝説の不良「鬼爆」の鬼塚が教師をするという。勉強もできない、ろくに教師としての知識も経験もないけど、型破りで、モノの道理を通す点で、信頼を得ていく話です。これも・・・ドラマがすごかったんです。

ドラゴン桜
三田紀房/著

落ちこぼれを東大にいかせる話。かなり勉強にフォーカスした内容。実用的な話が多く参考にしてた受験生も多かったのではないでしょうか。倫理や人として・・・というような教師ものにありがちな観点はあまりなく、東大にいけ、そうしたら人生は拓ける、というシンプルなメッセージがよかったです。

紹介しきれなくなりそうなので、このあたりにしておきますが・・・。教師ものは、時代の空気や、学生たちの感覚と連動していくので、これからもまだまだ新しい作品が生まれそうですね。期待です!