マンガ、読んでますか!
マンガ、描いてますか?
日本のマンガの数ってとんでもなく多くて、次に何を読んで良いのか判らない…。そう悩み始めると、あっという間にマンガの森で迷いがちです。
最近のマンガのタイトルの多様化を考えると、作品名だけで内容まで思い巡らせることがなかなか困難になってきました。そこで、今注目したいのがカテゴリーです。
カテゴリーって大事です、万人に喜ばれるマンガはその作品世界を心のどこかで共有出来る物語。それは学園もの、スポーツもの、ビジネスもの、恋愛もの。昔、どこかに置き忘れてしまった、そんな心残りをくすぐってくれる作品群から、未来に、夢の中に、いつだって灯っている希望のどこかに潜むまだ決して諦めてはいない憧れを舞台<カテゴリー>にした作品たちです。
つまりマンガは、物語性をもって描かれたフィクションであり、読む人の心に深く突き刺さる、今ここにあるノンフィクションでもあるんです。どんな作品でも「面白い!」と感じるのには理由があります。憧れとか反骨とか思い出とか、その理由に気付いた人がその気付いたポイントを刺激するように心を込めて描いた作品。面白く無いわけないじゃないですか!
今回は、憧れの一つ「宇宙」をテーマにしたマンガの色々をご紹介します!
宇宙は戦いの始まり
『テラフォーマーズ』作:貴家悠 / 画:橘賢一
ミラクルジャンプ / 週刊ヤングジャンプ掲載
あらすじ
環境破壊、人口爆発、そして資源枯渇。地球が限界に瀕しようとしてる時に発案されたのが、他の惑星を人が住める環境に改造する「テラフォーミング計画」。新天地を火星と定め、人類は苔とそれを餌とする「黒い生き物」を送り込む。
人為的温暖化を促し、火星の地下に埋蔵された膨大な二酸化炭素の放出による大気圧の上昇から人類の定住に適した惑星への改造が終盤を迎えようとした時、人類に課せられた最後のミッション、それが火星に解き放った「黒い生き物」の駆除だった。
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自分たち自体がそこの住民なのに、その世界の果てを想像するだけで怖くなる「宇宙」。明日、突然違う顔を見せるかもしれない、常に狂気を内包した「人」。そこにいるだけで忌み嫌われる「虫」。そう『テラフォーマーズ』はわたしたちが思う「恐怖の3点セット」を持つSFです。そんなエンターテインメントのテンプレートを踏みながら、そこに人間ドラマを埋め込むことで一層の面白さを生み出すことに成功したSFマンガの傑作なんです。
本作での「宇宙」は世界観です。
2013年版『このマンガがすごい!』オトコ編1位
『全国書店員が選んだおすすめコミック2013』2位
宇宙は約束の地
『宇宙兄弟』作画:小山宙哉
週刊モーニング掲載
あらすじ
少年時代のある日、UFOらしきものを一緒に目撃した南波六太と弟の日々人。それから19年後、日々人はJAXAの宇宙飛行士となり、月面への旅に向け訓練の日々を送る。その頃六太は会社を解雇され、自堕落な生活の中、やがて日々人と同じ宇宙飛行士を、そして火星に行くと決心したあの頃を思い出す。
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憧れや好奇心はエネルギーです!すごいアニメを見たとき、自分もこんな絵を描けるようになりたいと思うように、ヒーローの活躍を目にしたとき、苦しんでる人を助けられる自分になりたいと考えるように、子供の舌にとってはとんでもなく美味しい料理を食べたとき、空に流れる雲をずっと見続けたとき、周りにはいつも笑顔溢れる人がいっぱいいるそんな人に出会ったとき…。
憧れを胸に抱く瞬間は必ずあります。それにその時気付くかどうか。今、それを思い出せるかどうか。決心したあの頃の自分自身の強さに向かい合えるかどうか。いるいない、あるないではなくて、感じたか感じなかったか。そしてこのコマは、感じ過ぎたあの頃を思い出させるには充分な力を持っています。宇宙への物語の始まりが、驚きと憧れからだと丁寧に描かれているだけで、『宇宙兄弟』はわたしたち自身の物語だと判るのです。
本作での「宇宙」は夢の出発点です。
宝島社このマンガがすごい!2009オトコ編2位
マンガ大賞2009年度、2010年度2位
第34回講談社漫画賞選考会次点
2011年第56回小学館漫画賞一般向け部門受賞
第35回講談社漫画賞一般部門を受賞
宇宙は冒険の扉
『サザンと彗星の少女』作画:赤瀬由里子
トーチweb掲載
あらすじ
300年後、そう遠くない未来。他惑星で出稼ぎ労働者をしている青年サザンはある日、赤い髪の少女ミーナと出会う。彼女は彗星から生み出された、その身体に恐るべきエネルギーを秘める存在。やがてそのエネルギーを巡って、宇宙を駆ける大冒険が始まった!
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古ければそれで良い訳でもありませんし、懐かしければ琴線に触れるわけでもありません。マンガは時代と共に変化して、その面白さの数は足し算で増える一方であると同時に、その奥底に流れる王道もまた存在します。その王道はきっといつかどこかで触れたことがある物語ですから、なんだか懐かしさを感じてしまうだけなんです。
宇宙を駆ける冒険。青年と少女のボーイミーツガール。憎めない悪役達。気の良い仲間。悪の存在理由や行動原理に振り回される伏線地獄に少しの間別れを告げて、気持ちの良い冒険活劇に夢中になるのも悪くありません。ワクワクしてページをめくるあの瞬間を、『サザンと彗星の少女』はプレゼントしてくれるんです。
本作での「宇宙」は冒険の場です。
宇宙は蕩々たる海
『銀河英雄伝説』作:田中芳樹 / 画:藤崎竜
週刊ヤングジャンプ掲載
あらすじ
人類が宇宙進出を果たし1500年余りが過ぎた西暦3586年。銀河は専制君主制の「銀河帝国」と民主共和制の「自由惑星同盟」の二大陣営に分かれ戦いを続けていた。戦争が始まって150年以上経った頃、歴史を大きく変えることになる英雄が出現する。銀河帝国のラインハルトと、自由惑星同盟のヤン。二人が相見えるのはまだ先の物語である。
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ライバルと友と自分。その三角形で描かれる重厚なドラマから目を離すことができません。例えば三国志やアーサー王物語。常に物語は人と共にありました。『銀河英雄伝説』は宇宙を舞台にした人間の物語と、その人を通して紡がれた歴史を伝える物語なのです。
いくつかの友情の形、家族への愛、戦いとの邂逅。絵によってより明確になった登場人物達の心情を見る時、マンガの力を感じずにはいられません。
本作での「宇宙」は人が生きる舞台です。
1988年星雲賞日本長編部門受賞
宇宙は新しい世界
『プラネテス』作画:幸村誠
週刊モーニング掲載
あらすじ
ゴミによる環境破壊、貧富による格差、イデオロギーの衝突が生み出すテロリズム。それら科学文明の進化と引き換えに発生した様々な問題は、資源を外に求め人類が新たに進出した宇宙においても同様に発生していた。宇宙空間のゴミ「デブリ」の回収を生業としているハチマキは、今はその社会と経済と歯車の一つに過ぎなかった。
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人間はどこまでいっても人間。その生活の場が地球から宇宙に変わっても、同じように資源を掘り、世界を汚し、わかり合うことを得意としません。『プラネテス』はわたしたちの現実世界そのものです。そんな現実世界そのものだからこそ、そこに生きる人々の人間臭い感動とドラマにリアリティが生まれます。
特殊なテクノロジーよりも、人間のハートのほうが響く物語を生み出せる。これらはあるようでこれまで無かったSFマンガの新しい傾向です。世界は空想とリアルに繋がり始めているのだと実感できる、成熟した日本のマンガが生み出した新しく、そして当然の切り口なんです。
本作での「宇宙」は地球の延長線です。
2002年度星雲賞コミック部門受賞
宇宙は自由
『宇宙戦艦ティラミス』作:宮川サトシ / 画:伊藤亰
くらげバンチ掲載
あらすじ
人類の渇望と野心は留まることを知らない。宇宙へと進出した人々はやがて新たな文明を築き進化を遂げ、そして当然のように戦いへの道へと歩んでいた。宇宙移民「メトゥスの民」との熾烈な戦いの打開策として地球連邦議会は新鋭宇宙軍用艦「ティラミス」と一人の天才パイロットが駆る汎用人型機動兵器デュランダルの投入を決断する。その戦況の行方はまだ誰も知らない
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油断して読むと痛い目を見る、希に見るスペースオペラとギャグとシュールが一体化したマンガの面白さのフルコースが『宇宙戦艦ティラミス』です!(最強ロボット・デュランダルの)コクピットこそ故郷。つらい時も嬉しい時もすべて、主人公スバル・イチノセはコクピットの中で共に過ごしてきた。あれ、もしかしてコクピットを(最強生活環境の)自分の部屋のベッドに置き換えるとほぼ同じなのでは…?
ベッドの上にポテチのカスが舞い散るように、コクピットの中で千切りキャベツが舞い踊る。そんなシンパシーさえ憶えてしまうシチュエーションに加え、スバル・イチノセとクルー達の繰り出す様々な「あるある」行動。そう、ティラミスは家と自分とおかんとオタク仲間を宇宙で忠実に再現した、シンパシー溢れる作品なんです!
本作での「宇宙」はわが家です。
宝島社2016年このマンガがすごい!WEBオトコ編第3位
2019年第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞
宇宙への夢は宝
『ふたつのスピカ』作画:柳沼行
コミックフラッパー掲載
母の命を奪った日本初の友人宇宙機「獅子号」の墜落事故。アスミはその記憶とともに宇宙を目指すことを決意する。
本作での「宇宙」は追い続ける夢と約束です。
宇宙は新しい世界への海
『シドニアの騎士』作画:弐瓶勉
月刊アフタヌーン掲載
謎の生命体による太陽系の破壊から千年。人類存続をかけて航海を続ける船の中で起きる新たな出会いと、外で起きる驚異の遭遇。
本作での「宇宙」はエクソダスです。
宇宙は檻
『彼方のアストラ』作画:篠原健太
少年ジャンプ+掲載
突然、未知の世界に放り出されてしまったとしたら。知恵と勇気と友情が試される、5012光年先からの帰還の旅が始まった!
本作での「宇宙」は試練です。
宇宙は記憶の繭
『ぼくの地球を守って』作画:日渡早紀
花とゆめ掲載
前世の記憶と能力を秘めたまま現代に転生した異星人の七人。滅んでしまったかつての自分達の星の悲劇を繰り返されないようにと、月は地球を護り続けていた…。
本作での「宇宙」は眼差しです。
宇宙は試練
『11人いる!』作画:萩尾望都
別冊少女コミック掲載
宇宙大学への入学試験最終テストとして、外界から隔絶された宇宙船での53日間の協調性テストを受けるために乗り込んだ受験生達。10人であるはずの受験生だったが、その宇宙船の中には11人いた!
本作での「宇宙」は成長です。
1976年第21回小学館漫画賞少年少女部門受賞
もっと宇宙を漂いたい!
マンガという冒険の旅には、未だ辿り着いていない地平がゴマンとあります。しかも!その上!一度は成し遂げたはずの壮大な旅(作品)にでさえ、作者が気付かなかった物語が眠ってて、また新しい旅が始まることも少なくありません。もうマンガの魅力は事実上無限なんです!
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