東京 (28)
夜、湖のほとり、森の中。 焚き火が土とテントと毛布をゆらす。 朝、自分を囲んでいた黒が白く消えていく。 薄く残る白を吸い込むと、水と木の匂いがする。 この作品と出会ってから、行ったこともない夜と会ったこともない朝のことをなんどもなんども思い出す。 しっとりと露に濡れた芝、霞の向こうに見える山。 見たこともない炎と、飲んだこともないスープを思い出す。 パチパチと耳に響く音、湯気の向こうにひかる雫。 手を伸ばしたこともない空と、吸い込んだこともない空気を思い出す。 身震いする星たち、森の味がする風。 ああ、キャンプがしたい。
2019年 12月 20日