3行でわかる健康で文化的な最低限度の生活
新卒公務員の主人公・義経えみるが、生活保護に関わる仕事であるケースワーカーになり、様々な受給者とのやり取りをする物語
どうしても重苦しい雰囲気になってしまうテーマではあるが、膨大な取材とともに描かれたストーリーから作者の真剣さが伝わってくる
誰も悪者として描かれないが、社会の問題が解決されてスカッとするマンガでもない。そこには決して目をそむけてはいけない現実がある
アルとのコラボ
アルでは2020年7月に『健康で文化的な最低限度の生活』とのコラボキャンペーンを開催しました!
「#私と健康で文化的な最低限度の生活」と題して、この作品の感想をnoteにて募集!読者の皆様から数多くの素敵な投稿をいただきました!
投稿された記事はnoteサイト内でハッシュタグ 「#私と健康で文化的な最低限度の生活」を検索すれば閲覧することができます。魅力的な文章ばかりですのでぜひ一度読んでみて下さい!
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作品概要
『健康で文化的な最低限度の生活』は、2014年3月より「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載されている柏木ハルコ先生(Twitterアカウント)による社会派マンガです。
憲法25条の条文の一部をそのままタイトルに採用したこの作品は、新人ケースワーカーの目線から生活保護のリアルを描いています。
いくつかのマンガ賞を受賞、また実写ドラマ化をされています。
作品のあらすじ
区役所に採用された義経(よしつね)えみるは、生活保護を扱う福祉事務所に配属になります。4人の同期とともに新人ケースワーカーとして、生活保護受給者の自立を支える仕事を担当することになりました。
日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という理念に基づき定められた生活保護制度。
えみるは制度を学びながら、受給者たちとなんとか向き合います。
そんな中、えみるが担当していた受給者がなんと自殺してしまいます。
助けられなかったことにひどく落ち込むえみる。どうすれば受給者の命を守ることができるのか?ケースワーカーとしてできることをえみるは真剣に考え始めます。
登場人物
義経(よしつね)えみる
本作の主人公。空気を読むのが苦手なマイペース人間。お人好しすぎるあまり周囲に巻き込まれてしまいトラブルを起こすこともあるが、受給者の心に必死に寄り添おうとする頑張り屋。
栗橋千奈(くりはし ちな)
えみると同期の新人ケースワーカー。冷静沈着でテキパキと仕事をこなす反面、事務的な対応をとりがち。えみるや受給者との出会いを通して、少しずつ人に寄り添うことを意識し始める。
七条竜一(しちじょう りゅういち)
えみると同期の新人ケースワーカー。自身の家庭環境の影響から甘えを許さない熱血的な青年。その結果、受給者を精神的に追い込んでしまったことがあり、対応の仕方について悩んでいる。
半田さん
えみるの指導係。悩んだ時には的確にアドバイスをくれる頼もしくて優しい先輩。
京極係長
えみるの上司。財政に対する意識が強く、不正受給の取り締まりを強く部下に求めている。
作品で描かれる生活保護の問題
就労支援の難しさ
ケースワーカーは受給者の自立を助長するために就労支援を行います。とある受給者はその支援をプレッシャーに感じてしまいうつ病を患ってしまったり、別の受給者は働けない本当の理由を打ち明けようとしなかったり、えみるたちは就労支援の難しさを痛感します。
不正受給問題
ニュースに取り上げられる「不正受給問題」。えみるが担当した家族も、子どもが隠れてアルバイトをしていたため、不正受給に該当してしまいました。どのような場合不正受給にあたるのか?どうすれば防げたのか?不正受給という大きな問題にえみるは直面します。
家族に援助を求めるべきか?
過去に親から虐待を受けていたことが疑われる申請者に、生活保護を受給すべきか?それとも親のサポートに任せるか?ケースワーカーとしての判断が求められます。
世帯問題
生活保護は世帯ごとに受給します。たとえ1人が経済的に苦しんでいても、同居人が一定以上の収入がある場合、生活保護の申請は却下されてしまう可能性があります。そんな「世帯の壁」問題が描かれます。
アルコール依存症
えみるが担当した受給者の一人は、アルコール依存症に苦しんでいました。自立できるために依存症の助言や指導をケースワーカーは行います。依存症という病気に向き合い続ける難しさが描かれます。
子どもの貧困問題
貧困の家に生まれた子どもは貧困な生活を送るしかできないのか?ケースワーカーはどんな支援ができるのか?子どもの貧困問題に、えみる、そして同期の栗橋が真正面から向き合います。
貧困ビジネス
住まいを失ってしまった人たちにすり寄る「貧困ビジネス」の影。劣悪な住居を提供されるかわりに取り上げられる生活保護費。「健康で文化的な最低限度の生活」を送るためには克服しなければいけない「住まいの貧困」が描かれます。
作品の魅力
この作品の魅力は、大事だけれど難しい問題をえみるたちと一緒に考えることができる点です。
えみるは、仕事を通して2つの大きな壁に直面します。
生活保護の制度を理解し、業務を遂行することの難しさ。
自分とは全く境遇の違う人と信頼関係を築いていくことの難しさ。
「経済的に困っている人々を社会全体でどうやって支えていくのか?」、「境遇の違う人とどうやって信頼関係を築いていくか?」この2つのテーマは、えみるだけでなく、現代社会を生きる私たちにとっても重要なテーマだと思います。とはいえ、難しい内容なので、考えるのをついつい後回しにしてしまいがちです。そんな難しいテーマだからこそ、マンガの出番です。
えみるをはじめとした新人ケースワーカーが、これらのテーマにどのように立ち向かっていくのか?彼女らの頑張る姿を見ることで、感情移入しながら一緒に考えていくことができます。
受賞歴及びノミネート
2015年の「このマンガがすごい!オトコ編」で第10位にランクイン。
2019年1月には「第64回小学館漫画賞・一般向け部門」を受賞。
2019年2月、「第23回手塚治虫文化賞・マンガ大賞」最終候補作品ノミネート。
実写ドラマ
2018年7月から9月まで、フジテレビ系列にて実写ドラマが放送されました。
✨NEW予告映像✨
だんだん見えてくる#ケンカツ の世界観🚲
30秒バージョンUPします⬇️#健康で文化的な最低限度の生活 pic.twitter.com/sbXMXjDPbq— 【公式】火9『健康で文化的な最低限度の生活』 (@kbss_ktv) July 3, 2018
出演
義経えみる|吉岡里帆
栗橋千奈|川栄李奈
七条竜一|山田裕貴
半田明伸|井浦新
京極大輝|田中圭
オープニングのダイナミックJUMP😼❤️#健康で文化的な最低限度の生活 #ケンカツ#吉岡里帆 #井浦新 #川栄李奈 #山田裕貴 #田中圭 #遠藤憲一 pic.twitter.com/vXBrzkGt6R— 【公式】火9『健康で文化的な最低限度の生活』 (@kbss_ktv) July 17, 2018
FODにて配信中です。(2020年6月現在)
豆知識
えみるたちが勤める区の公式キャラクター「しーだくん」
単行本の巻末では、「しーだくんでもわかる!生活保護Q&A」というテーマで、作中で紹介しきれなかった生活保護のことを詳しく教えてくれます。生活保護について正しい知識を得ることができます。
作中に出てくる名言
そういう人にも、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するのが、我々の仕事です。【6集】
えみるから支援方法について相談を受けた先輩職員のセリフです。「そういう人」とは、周囲に多大な迷惑をかけている人のことです。どんなに迷惑な人間でも、「最低限度の生活」を保障するのがケースワーカーの仕事であることを新人のえみるに教えます。
それは「迷惑」ではありません!【8集】
子供を産むべきか否か悩んでいる女性に栗橋が伝えたセリフです。「それ」とは、他人の手を借りることです。「生活保護を受給したまま子どもを産んだら、世間に迷惑をかけたことになる」と感じている女性に対して、困ったときに周囲に助けを求めることは決して迷惑なことではないと断言します。
作者情報
作者の柏木ハルコ先生は、過去には女性の性欲を大胆に描いた『いぬ』や、2008年に実写映画化もされた『ブラブラバンバン』など数々の作品を発表してきました。
インタビューで「デビュー以来一貫して人と人とのコミュニケーションを描いてきた」と語る柏木先生。本作は、東日本大震災以後、人間関係や社会の複雑さを改めて実感し、「自分とは違う人間に向きあおうとする人間の心を描きたかった。」との想いで描き始められました。
柏木ハルコ先生のTwitter:https://twitter.com/harukokashiwagi