東京 (28)
【もらう人から与える人へ】 生まれたからには生きていかないといけない。ご飯を食べて、服を着て、家に住んで、自分の命を繋がないといけない。 そのための方法はたくさんあるけれど、この作品の主人公が子供の頃にとった方法は、「誰かから奪う」言い換えれば「世界から与えてもらう」ことだった。 奪う対象はダンジョン、必要なリスクは自分の命。そうして今日の命を明日に繋いでいく。 今日死ぬかもしれない毎日の中で、生きるために、自分のために、必死になって世界のどこかから何かを奪う。 だけどふと気づいた。もう生きるために命をかけなくてもいい。生きるために必死にならなくてもいい。 それはとても幸せなことだ。望んでいた場所にようやくいけたんだ。 「だけどじゃあ、次はどこへいけばいいんだろう?」 偶然出会った捨て子を育てる主人公は、すでにその答えを持っている。 その子を育てることだけではなく、村のドワーフの子や学者の子の面倒を見ること、村付きの冒険者として面倒な役割を率先してこなすこと、自分を育ててくれた世界へ恩返しをするかのような行動は、きっと主人公が見つけた答えなんだろう。 誰かに何かを与えるようになるってことが、大人になるってことなのかもしれない。
2019年 07月 28日