エマ

森薫/著

エマの好きなところ

エマは、「生き方」について考えさせられる漫画です。 主人公のエマはメイド、もう一人の主人公のウィリアムスは大金持ちのジェントリ。 階級社会が色濃く残るイギリスで、二人は身分違いの恋に落ちます。 登場人物の立場はさまざま。 貴族、資産家、使用人、メイド、料理人、花売り、家庭教師、オペラ歌手、インドの王子、ドイツのメイドなど、多様な身分と価値観を持った人たちが出てきます。 そして、この漫画の最大の特徴は、こういった大きな生まれの差のある彼らが、何の垣根もなしに理解し合える、触れ合える世界観であることです。 エマは物語の途中、ドイツ出身の資産家に雇われることになり、ドイツ人とイギリス人が混じったお屋敷で、個性豊かな登場人物と友情を深めていきます。 歴史的にはドイツとイギリスは、その後戦争状態になりますが、この世界において、ドイツ人とイギリス人は精神的に常に平等で、尊重しあっています。 これは、国に限らず、メイドと資産家、イギリスの資産家とインドの王子、などなど、大きく見れば複雑な背景を抱える両者が、人と人同士の付き合いにおいて平等な世界観が描かれています。 この立場だから偉い。この身分だから偉い。この職業だから偉い。といった価値観はこの世界にはなく、登場人物一人一人の幸福感が丁寧に描かれ、また尊重されているのです。 自分の幸福とは何か、生きていく意味はなにか、あまり深く考える意味はないのかもしれません。 ただ、この作品を読むと、そんな自分の小さな生き方の指針を大事にできると思います。 作者の森薫さんの優しさと、極限までこだわった絵作りが堪能できる名作です。ぜひ一読してみてください。

2019年 09月 03日

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