東京 (28)
つげ義春・はるき悦巳ファンには是非読んでもらいたい作品。舞台は1973年の大阪、釜ヶ崎。メイコの「遊び場で人を壊す」能力を使って金を儲ける仲介屋。仲介屋からの取り分で酒を飲むメイコのお父ちゃん。学校にも通っていないよそ者のメイコにじゃんけん、縄跳び等々様々な遊びを教え、たまにメイコをいじめる(メイコはいじめられたと思っていない)5人の児童。登場人物はそれぞれ問題を抱え、2021年の言葉でいうなら「社会的弱者」「マイノリティ」「貧困家庭」「性同一性障害」「在日コリアン」「反社会的勢力」…。これだけ羅列すると暗い作品と思われそうだが、とんでもない。登場人物はメイコと何気ない会話で交流し日々暮らしていく。メイコは色々な遊びを覚え、自転車に乗れるようになり、友達に識字学級のテキストのお下がりをもらい漢字を覚え、釜ヶ崎暴動を建物の屋上から見物し、世界をどんどん広げていく。仲介屋の示すターゲットの人間を壊しながら。ラストの電車内のシーン。メイコは最初無表情だがメイコが名付けた猫の名前と呼応するように表情が少し変わる。周りの大人たちの様子と相まって圧巻だった。泣いた。 個人的には「このマンガがすごい!」のベスト3に入ってバカ売れして欲しい。ホルモンをほおばるメイコの可愛さを全世界に届けたい。とりあえずつげ義春ファンを囲うためコマ掲載の許可をお願いします。
2021年 01月 24日