僕だけがいない街

三部けい/著

僕だけがいない街の好きなところ

タイムリープサスペンスの新たな扉を開いた傑作。 主人公、三上悟の身には時折不思議な現象が起こる。それは「記憶を持ったまま意識が数分過去に戻る」というもの。そしてそれが起きた時は、必ずなんらかの事件があった。 ある日、悟はまたその現象に出くわし、いつも通り事件を未然に防いだ。しかしその行動は、10数年前に悟自身が体験した凄惨な事件へと繋がっていくのだった。 というのが本編のあらすじです。 とにかくもうタイムリープとサスペンスの組み合わせが鳥肌立つほど素晴らしい。 基本は「記憶を持ったまま過去へいって事件を防ぐ」というタイムリープではありがちなストーリーなのですが、読んでいて「ありがちさ」なんて微塵も感じさせません。 その理由は繊細な心理描写と、ダイナミックな展開です。 心理描写においては主人公の悟、その母、悟の友達、などなど様々なキャラの内情を丁寧に拾い上げます。その結果キャラに共感しまくるので、悟が事件を防ぎかける時なんてもう、「このままうまくいってくれ!」と神に祈るような気分になりました。 展開について言うと、タイムリープの使い方が本当にうまい。 「え!?いま!?」と言いたくなる瞬間に何度も時間を飛ばされます。そして飛んで行った先の時間軸でもまた物語が面白いもんだからもうたまらん。 そんでまたタイムリープで時間を戻したら「あれどうなった?」とか「今度こそあれしよう!」とかそう言う積年の思いみたいなのがあるので読まずには要られません。 SF系のサスペンスが好きな方には絶対におすすめできる作品です!

2019年 09月 21日

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