それはダークヒーローか社会の闇か。清潔になりすぎた社会だからこそ生まれた「彼ら」の生き様を紹介してみる


ザ・ファブル

TVでは「バカ殿様」からおっぱいが消え、喫煙を助長するからとタバコのシーンはNG。反社会勢力との付き合いがあれば袋叩きにされ、謹慎や引退に追い込まれる芸能人。インターネットでは、Googleによって暴力的なコンテンツは規制されていく世の中。

見たくないもの、不適切と思われるものは排除すべしという風潮が、年々強くなってきているようにも思えます。しかしながら現実として、直視したくない社会の闇というのは必ず存在します。

学校へ通い、仕事をこなし、一般的な生活を送っている現代人にとって裏社会などは、ファンタジーや異世界転生ものの世界と、距離的には同じくらい遠い存在ではないでしょうか。

「薬物の売人なんてとんでもない、根っからの犯罪者気質に違いない。」

裏社会との距離が遠すぎるが故に、こうした思い込みを持っている方も多いのではないでしょうか。

D・カーネギーの著書『人を動かす』に、こんな興味深い話があります。

私は、シン・シン刑務所長から興味のある話を聞かされた。およそ受刑者で自分自身のことを悪人だと考えている者は、ほとんどいないそうだ。(中略)犯罪者は、たいてい、自分の悪事にもっともらしい理屈をつけて正当化し、刑務所に入れられているのは不当だと思い込んでいるものなのである。

引用元:D・カーネギー『人を動かす』
人を動かす 新装版
/著,/翻訳

このように受刑者たちは、刑務所にいるという事実がありながら、悪いことをしているという自覚はありません。

刑務所での人間関係を描いた映画『ショーシャンクの空に』でも「ここの連中はみんな無実なのさ」という受刑者たちの決まり文句があり、彼らには彼らの正義があるのです。


今回の記事では、様々なジャンルの「社会の闇」をテーマにしたマンガを集めてみました。

反社会勢力の正義、犯罪を犯す者の正義、テロリストの正義、きっと考えたこともないような価値観と出会えるはずです。

マンガという慣れ親しんだ媒体で、あなたの世界を広げてみてはいかがでしょうか。

反社会勢力

『新宿スワン』

新宿スワン
和久井健

風俗嬢のスカウト会社「バースト」に入社した、主人公・白鳥龍彦が歌舞伎町でスカウトマンとして生き残るため、成長していく物語。

登場人物が悪人揃いの中、顔はコワモテだけど純粋で優しい主人公のタツヒコが、正義のヒーローに見えるほどキャラが立っていて魅力的です。

新宿スワン

スカウト会社自体は反社会勢力ではありませんが、スカウトという仕事の性質上、ホスト・風俗・AV・闇金・ヤクザなど、様々な職種の人物との交流や抗争が描かれ、水商売の話のみならず物語が幅広く展開されていきます。

作者である和久井健先生は元スカウトマンであり、その経験から業界の生々しさが描かれています。主人公の上司・真虎が指南するスカウトの基本などは、ナンパを考えている人は参考になるかもしれません。

新宿スワン


『ザ・ファブル』

ザ・ファブル
南勝久

完全無欠の殺し屋・ファブルが、大阪の老舗ヤクザ・真黒組が管理する住宅にお世話になり、1年間休職して日常を過ごす物語。

ザ・ファブル

はじめは中々真黒組に信用されないファブルでしたが、若頭・海老原が抱えるトラブルを、殺しをすることなく解決していき、冗談を言えるような関係になっていくのが、ヤクザものながらほっこりします。

裏社会の住人ばかりが出てくるザ・アウトローなマンガですが、不愉快な話は少なく憎めないキャラばかりで、温かい気持ちになれる作品です。

ザ・ファブル


窃盗・詐欺

『ギャングース』

ギャングース
肥谷圭介/著,鈴木大介/その他

職ナシ、学ナシ、犯罪歴アリの3人組が、犯罪集団相手に窃盗を繰り返し、児童養護施設に「タイガーウッズより」という置き手紙と共に多額の寄付をする痛快ストーリー。

コミックスの1ページ目に「※この漫画は実話を基にしたフィクションです。ただし犯罪の手口はすべて実在しますので、ぜひ防犯に役立てて下さい。」と記載されており、裏社会を中心に取材をするルポライター・鈴木大介さんの取材をもとに、実際の空き巣の手口や犯罪者の心理などが描かれています。

コマの隅に書かれている「すずきメモ」は、顔に傷が多いやつは下っ端、牛丼屋は深夜はワンマンなので強盗しやすいなど、裏稼業あるある満載です。


『クロサギ』

クロサギ
黒丸/著,夏原武/著

一般人をカモにしている詐欺師を狙い、そこから金銭を騙し取り返す最凶の詐欺師・クロサギの物語。

ロジックの中に嘘を織り交ぜ言葉巧みに相手を誘導する、詐欺師 vs 詐欺師の戦いで、人を騙すのではなく、人をハッピーにするために嘘を使いたい、という方にはオススメのマンガです。

裏社会やアウトローたちに取材を続けてきた夏原武さん原案のもと、現実の法律に則り、融資・不動産・アルバイトなど日常に潜む詐欺を幅広く取り扱っています。


テロリズム

『テロール教授の怪しい授業』

テロール教授の怪しい授業
カルロ・ゼン 石田点

テロリズムや人類の暴力の歴史、テロとカルトの真実を学ぶローレンツゼミを舞台にした物語。

テロール教授の怪しい授業

「知るのは怖い、知らないのはもっと怖い。複雑怪奇な現代社会を生き抜く術を授ける白熱教室、洗脳対策、読む劇薬」

という作品コピーで、テロリスト予備軍かもしれない現代人の我々に対して描かれた作品です。

テロやカルトに対して、大学生が専門家に素朴な疑問をぶつけていく講義スタイルで話が展開されていくため、非常に読みやすいです。

テロール教授の怪しい授業

テロリストとは何かを考えたことがない方や、「テロリストになんて自分がなるわけないじゃん」と思っている方にオススメ。

思考停止せず己の常識を疑え!『テロール教授の怪しい授業』


『Sエス—最後の警官—』

Sエスー最後の警官ー
藤堂裕/著,小森陽一/著

テロリストの生け捕りを絶対とする、架空の警察庁特殊急襲捜査班(NPS)という少数生成部隊の活躍を描いた物語。

実在する銃器対策部隊や、特殊事件捜査係(SIT)への取材をもとに、警察からみたテロ事件を描いています。(参考:担当編集者が語る、ビッグな名作が生まれる現場!『Sエス-最後の警官-』担当編集者 垣原 英一郎 氏インタビュー

シージャック事件で登場した正木圭吾は、手段はテロだけど発言は正論という国際テロリストで、読者にファンが多く、作品を通じてテロリストのカリスマ性を体現しています。


レイプ・売春

『先生の白い嘘』

先生の白い嘘
鳥飼茜/著

友達の彼氏・早藤にレイプされた過去を持ち、ハメ撮り画像で揺すられ現在も関係を強要されている、24歳の女高校教師・原美鈴が本作の主人公。

処女マニアで強姦魔の早藤が胸糞悪いので注意が必要ですが、そのクズっぷりが読者の憎悪を駆り立てる印象深いキャラクターです。

早藤に犯された時の女性の反応が、泣き叫んだり必死に抵抗するわけでもなく、ただ涙を流し茫然と時間が経つのを待っている場面が恐ろしく、心をエグられます。

他にも個性的な登場人物ばかりで、バイト先のおばさんに強姦された新妻や、天然ゆるふわで生徒や教師から大人気だけど休み時間は男とイチャイチャしまくりな三郷など、この作品はそれぞれのキャラが強すぎるのが特徴的。

男女平等について何かしら疑問を抱いている方にオススメです。


奈落の羊

奈落の羊
きづきあきら サトウナンキ

アルバイトを無断欠勤し大学にもろくに通わない主人公のシュージは、動画の生配信が趣味。

ネタが尽きてきた頃に、ネットカフェ難民で援助交際によって生計を立てている少女・メイと出会い、お金をあげて奴隷同然の扱いをし動画再生回数を稼ぐという、インターネットや売春の闇を描いた物語です。

作品を読み進めていくと、メイがお小遣いをもらうために家畜同然に働いているのと同じように、動画再生回数や投げ銭のために動画配信を続けているシュージも、視聴者の奴隷になりつつあることに気づくはずです。


貧困

『闇金ウシジマくん』

闇金ウシジマくん
真鍋昌平/著

10日5割(トゴ)という超暴利で、銀行や大手消費者金融に見放されたブラックリストを顧客に持つ闇金融「カウカウファイナンス」を舞台に、主人公である経営者・丑嶋馨のもとに訪れる客の人間模様を描いた物語。

「人並み以下のクセに人並みに暮らしてる、身の程知らずのクズどもに終止符を打つのが......俺たち闇金の仕事だ!!」

第1話で丑嶋がそう語るように、「カウカウファイナンス」に訪れる人間の悲惨な末路が描かれています。

作者の真鍋昌平先生は「取材で知り合った人たちに夜呼び出されて朝まで飲んで、それでも帰ったらマンガをすぐ描き始めるということがしょっちゅう。」と語っており、裏社会の人たちとの信頼関係を積み重ねて出来上がったのがこの『闇金ウシジマくん』なのです。(参考:「闇金ウシジマくん」作者が見た平成格差社会


『健康で文化的な最低限度の生活』

健康で文化的な最低限度の生活
柏木ハルコ(作者)

一定の条件を満たせば全ての国民が無差別に受け取ることができる「生活保護」がテーマの作品。

新人の公務員が、生活保護受給者の相談や支援をしていく「ケースワーカー」として奮闘していく物語で、実際の生活保護行政の現場でも研修として使用されています。(参考:”最低限度の生活”って?漫画で広がる理念

健康で文化的な最低限度の生活

生活保護受給者といっても、困窮している理由は様々で、役所にやってくる人は多種多様なキャラクターが登場してきます。

また生活保護受給者のリアルだけでなく、ケースワーカーの闇や過酷さも多く描かれており、主人公が担当する受給者が自殺した際、先輩職員が励ますために「1ケース減ってよかったじゃん。」という言葉が登場するシーンがあります。

健康で文化的な最低限度の生活

このシーンは、ケースワーカーへの取材で柏木ハルコ先生が実際に耳にされた描写で、「区民が死んで仕事が減ってよかったね」とほぼ同義の言葉であるため、読者としては複雑な気持ちになります。(参考:「健康で文化的な最低限度の生活」柏木ハルコ・インタビュー


青少年問題

『夜回り先生』

夜回り先生
水谷修/著,土田世紀/著

「夜回り先生」と呼ばれる夜間高校教師・水谷修先生が、繁華街をさまよう少年少女たちと向き合い、彼らの更生に尽力するノンフィクション。

いじめ、リストカット、虐待、薬物乱用など、青少年の身近に潜む問題に立ち向かっていき、教師という枠を超えて、昼夜子どもたちを理解しようとする姿は心打たれます。

「マジメな子ほどマジメにドラッグを使い...マジメに壊れていく。」

本作には印象深いメッセージが数多く登場してきます。

罪のない子どもたちは、自分が属する環境によっていともカンタンに闇の世界に迷い込んでしまう、ということを強く訴える作品で、思春期で悩みを抱えている学生や、子を持つ親世代など幅広い方にオススメのマンガです。


『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』

ちいさいひと 青葉児童相談所物語
夾竹桃ジン/著他2名

母親から虐待を受けていた主人公・相川健太が、児童虐待から生き残ったサバイバーとして自らが児童相談所で働き、1人でも多くの子どもを救うために奮闘する物語。

児童虐待についてはあまり身近に感じる方は多くないかもしれませんが、平成30年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数は159,850件で、これまでで過去最多となっています。(参考:厚生労働省HP

本作の主人公に関しては、幼少期に受けた虐待の影響でフラッシュバックしてしまうこともありますが、自身のつらい過去から来るカンを武器に、小さな子供たちの異変にいち早く察知していきます。

また、児童相談所のフットワークの重さが印象的で、肝心なところでグズグズしてしまうところはリアリティに溢れています。

児童虐待という社会問題を扱う話題作『ちいさいひと』。子どもたちが発するSOS信号


今後の自衛に役立つかも

ドラゴンボール』のフリーザや『鬼滅の刃』の鬼舞辻無惨など、良いマンガには良い悪役が存在します。

それら「普通」のマンガよりも、悪役の割合がやや多めな社会の闇を扱った作品を紹介してみました。

現実世界の光の当たらない部分を取り扱った作品は、目を背けたくなる内容だからこそ、我々読者の心に強く爪痕を残していきます。

アウトローなキャラクターの異なる価値観に触れることで自分の世界が広がるだけでなく、反面教師としてこれらの作品を読むと、今後何かあった時に役に立つかもしれません。

今回紹介した作品はどれも生々しすぎるので、心に余裕がある時に気合を入れて読むことをオススメします。


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