2020年、いろんな意味で特別な年になりましたね。世界中すべての人が、多かれ少なかれ痛みを抱えたのではないでしょうか。あるはずだった未来が消えてしまったこと、好きだったものがなくなってしまうこと。
そんな中、2020年3月に国連から全世界のクリエイティブに向けて、衛生管理や感染予防の啓発を促すメッセージが出されました。物理的に分断された世界でも、人はクリエイティブで繋がれることを示してくれたようで、私はこの国連のアクションがとても好きです。
👉国連からのメッセージ(※PDFが開きます)
今回のテーマは「#読んで良かったマンガ10本 2020」です。生まれてこの方、出会い別れ出会ってきたマンガの数々から選んだこの10本、選り抜かれた作品はそのまま選者のクセ、個性、視線…色々なものを映す鏡になるのでしょう。
目次
- 『螺旋じかけの海』
- 『BLUE GIANT SUPREME』
- 『東独にいた』
- 『カナリアたちの舟』
- 『忘却バッテリー』
- 『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』
- 『ミノタウルスの皿』
- 『マイ・ブロークン・マリコ』
- 『この音とまれ!』
- 『インハンド プロローグ』
- クリスマスに贈りたいとっておきのクリエイティブ
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『螺旋じかけの海』
病気によって前と同じことができなくなってしまったり、姿かたちが変わったり。自分自身でももどかしいような肉体に囚われながら、それでも生きたいと思う生物の本能が好きです。『螺旋じかけの海』では、生命の一つ一つに一喜一憂しながら、その生命が生きる道をともに模索してくれるような医師の姿が描かれていて、過酷な環境でも適応しようとする生命の強さを感じさせます。
人間か人間じゃないかは、姿かたちではなく、人間として生きたいかどうかが決めるような気がしました。2020年12月現在、1話はnoteで無料公開中なので、ぜひ読んでみてください。
『BLUE GIANT SUPREME』
もしも耳が聞こえなくなっても、視覚的に音を感じることができるとしたら、『BLUE GIANT SUPREME』みたいな感じじゃないでしょうか。音って鼓膜を通してだけ伝わるものじゃないんだなって感じさせてくれる一冊です。
いつか世界一になる奴と知り合えたらステキだなって
主人公のDの演奏が、彼の全身から噴き出して、音楽を聴いた時と同様に全身が震えるみたい。世界一なんて、78億分の1しかないのに、誰かのまっすぐな情熱が、本当に叶ったらいいなって願いたくなります。
『東独にいた』
壁によって東西に分けられてしまったドイツのように、敵対する勢力に分かれた男女がお互いに惹かれ合う物語です。想いをうまく伝えられなかったり、環境に抗えなかったり。物語で描かれる世界は自分とはぜんぜん違う状況なのに、届かないもどかしさに同じ想いを感じるみたい。『東独にいた』の天才と超人は、二人を隔てる壁を壊して世界を繋ぐことができるでしょうか。
『カナリアたちの舟』
ある時、世界が全く変わってしまい、新しい環境で暮らさなければならなくなったとしたら。当たり前にあったものがもう二度と戻らないってことに気づけたら、出会うことのすべてが愛おしく感じるのに。手元にあるうちって大切さには気づかないものですよね。
宇宙人にさらわれて身体をつくり変えられ、もう地球に戻ることもできない人々。以前とはぜんぜん変わってしまった世界を、自分たちの手で素晴らしく変えていくにはどうしたらいいのか。『カナリアたちの舟』を通じて考えたいです。
『忘却バッテリー』
疲れた時はとにかく笑いたい。どうしようもなくしんどい時は、勉強するとか行動するとか夢を叶えるとかどうでもいいので、とにかく寝るか笑いたい。最強のバッテリーと謳われていた捕手が、最強のアホになって戻ってきてくれたおかげで、どん底の気持ちにも光が見えました。
努力では才能の壁に届かないものなのでしょうか。でもその差が分かるのは、努力してきた人だからかもしれません。笑わせてくれて痺れさせてくれて、でも最後に応援したい気持ちにさせてくれるのが『忘却バッテリー』です。
『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』
名前は知っているけど、詳しくは知らなかった薬剤師さんの仕事ぶりが描かれているのが『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』です。薬と一緒に飲んじゃいけない食べ物や、薬と一緒に食べると味が苦くなってしまう組み合わせなど、日常に役立つ知識がいっぱい。困ったことがあった時には頼れる人がちゃんといること。助けてくれる人がたくさんいるっていう安心感をくれる一冊です。
『ミノタウロスの皿』
もしも自分が食べられる立場だったら、おとなしくその運命を受け入れることができるのでしょうか。牛に食べられることが名誉な世界の中で、食べられる役に選ばれた栄誉を感じながら食卓に上がる少女の、ほのかな葛藤を描いたのが『ミノタウロスの皿』です。自分とは違う立場の人々の思想や哲学、生き方。相手へのリスペクトとは、相手の意志をただ受け入れることなのでしょうか。
藤子・F・不二雄先生のシュールな一面が垣間見れる短編集は、常識が馴染みきった自分の殻を打ち砕いてくれるかのようです。
『マイ・ブロークン・マリコ』
大切な人が突然いなくなってしまった時、大事だったものがなくなってしまった時。存在してたはずのスペースが、なんだか空いてしまうような気がしてしまいます。
それは予想外のもので埋まるのかもしれないし、ずっと埋まらないままなのかもしれません。二度と取り戻せない痛みを抱えている時、誰かの優しい寄り添いが、驚くほど深くまで心に届くことがあります。『マイ・ブロークン・マリコ』は、傷ついた心の痛みと、傷が癒されていくあたたかさを同時に与えてくれる作品です。
『この音とまれ!』
「分かりません」や「ごめんなさい」が言えなくて、ごまかすために言葉を重ねてしまうことがあります。重ねていくうちに、どんどん自分の本心と遠ざかって、本当にやりたかったことが手の届かないところに行ってしまって。『この音とまれ!』には、一人の女の子が出てきます。仲のいい人たちがうらやましくて、輪に入れない寂しさからいじわるをしてしまった彼女が、受け入れてくれてもらえたことをきっかけに、みんなに謝りにいくところが好きです。
絆が自分を変え、それが輪になって広がっていくこと。音楽が人の心を揺さぶり、仲間を増やしながら連鎖していくこの物語を、愛する仲間が増えたらとても嬉しいです。
『インハンド プロローグ』
合理性よりも感情を優先してしまうのが人間で、でもその爆発しそうな衝動を抑えたいって願ってるのも人間で。素直になれなかったり、誰かに当たってしまったり。そんなことしないほうがいいって分かっていても、人間の心はとても不合理。
医療は、そういう人間個人の感情のざわめきを、癒すことができるのでしょうか。『インハンド プロローグ』に、未来の医療の考え方が詰まってる気がしています。
クリスマスに贈りたいとっておきのクリエイティブ
ヒトに生まれてきたから、ヒトが創ったものの尊さが分かるし、それに救われることもたくさんあります。こうしてたくさんの物語がこれからも生まれ続ける世界、それを楽しむ余裕がある社会が、これからもずっとつづくといいなと思っています。マンガ、最高!