SLAM DUNK(スラムダンク)

井上雄彦

SLAM DUNK(スラムダンク)の好きなところ

我が家には単行本の『SLAM DUNK』が全巻揃っているのにもかかわらず、なぜか『SLAM DUNK』完全版の24巻だけ別にある。 おそらく妻が買ったものだと思う。完全版でいう最終巻だ。つまり、"湘北高校"VS"山王工業高校"の戦いで一番イイところが収録されている巻だ。 妻は『SLAM DUNK』の一番イイ所を、僕の持ってるヘナヘナで黄ばみまくってる全て初版の単行本ではなくて、イイ状態で読みたかったんだろうと察する。 僕は単行本で『SLAM DUNK』は何度も読んでるので、敢えて『完全版』を開くことは今までなかった。 そして今、初めて手に取っている。 単行本にはない重み、紙の質によるものなのだろうか、画も単行本より心なしか細かく写ってる気がする。えっ!?カラーのページもあるのか。「完全版」の名にふさわしい中身であったことに今さら気づく。妻が24巻だけを買っていたことに納得がいった。 パラパラとめくってみた。 やっぱりアレだ。最後のアレ。あそこで手が止まる。 77対76で湘北が1点差で勝っての残り15秒の山王工業ボールのシーンだ。 ≪深津のゲームメイクに託した≫ ここから始まる試合時間残り12.7秒。いつ読んでも毛穴が開き、鳥肌が立つ。 よくよく見てみると、このページから≪はいあがろう 『負けたことがある』というのがいつか大きな財産となる≫という山王工業高校の監督"堂本"の名言が生まれるまでの50数ページは、たった1つのセリフを除き、それ以外は解説もセリフもない。 1つだけあるセリフというのが≪左手は手えるだけ≫、だ。 これまた皆さんもご存知の"桜木花道"の有名なセリフだ。 50ページ以上を無音・無台詞で描いたのも関わらず、そこに音や声が頭の中で生まれるのはなぜだろう。 表情。 そう、表情だけでその場の空気が生まれているのだ。その中でも「目」が重要な役割を果たしているのではないかと思う。 刻々と終わりに近づき、選手・監督はもちろん、ギャラリーも皆どんどん瞳孔が開いてくる。そして、一人落ち着く桜木の目。「左手はそえるだけ」のところだ。 終了間際の桜木のシュートの判定に、中立を保とうとする審判の目。 シュートが決まり、桜木と対峙した時の流川の目。 未だ現実と取れない複雑な湘北メンバーの目。 そして、敗れた山王工業のメンバーが会場を後にする時の目。 ”目”に注目してみると、全て目の描き方が違うのが分かる。 あの漫画史に残る名シーンが名シーンたる所以は、目にあったのではないだろうか。

2019年 08月 19日

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