not simple

オノ・ナツメ/著

not simpleの好きなところ

ツキのなさすぎる青年イアンと、その生涯を小説にしようと寄り添う青年ジムの話。 イアンは生き別れになった姉を探すため旅に出るが、結果、すでに死去していることがわかり絶望するイアン。姉は刑務所にはいり、HIVで死んでいた。 イアンは幼少期、アル中の母の酒代のために売春をさせられており、その仲介をしていたのが姉の恋人で、そのせいで姉もイアンもHIVに感染してしまう。そのことが分かり、姉は恋人を刺し、刑務所に入ったのだ。 イアンは薄々感づいていたが、自分が実は、母と離婚した父と「姉」との間にできた子供であることが判明する。父親は実の娘に手を出し、姉は母親への当て付けとしてイアンを生んだ。 家族の温もりも失ったイアンは旅の途中、優しい年上の、母親のような女性と会い、再開の約束をする。 当日、さまざまな思惑のすれ違いでイアンは駅のトイレで刺殺される。 ジムはその全てを小説にした。イアンの出来事ではなく、イアンの全てを小説にした。小説を出版したあと、ジムは失踪、おそらくは自殺したと考えられる。 まったく救いようのない、not simple な物語。美しい小説を読んでいるような気になる作品です。

2020年 03月 22日

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