ぼくは麻理のなか

押見修造

ぼくは麻理のなかの好きなところ

「ここに自分はいない」みたいな感覚を知っている全ての人に読んで欲しい作品です。 ーあらすじー ■一人暮らしの下宿で引きこもり生活を送る大学生、小森功はある朝、自分の目を疑った。 ■知らない部屋と知らない家、鏡には見覚えのある顔。近所のコンビニでよく見かけた、輝くように美しい女子高生。 ■事態が飲み込めないまま小森は女子高生として生活を送りつつ、元に戻る方法を必死で探す。 ■その生活の中で見えてきたのは、その子が抱えていた苦しみと虚無感。友達、親、周りの大人たち、彼らが押し付ける「理想」の金型によって、無理やり変えられる自分の形。 ■これは、自分を取り戻す物語。 表現の手腕が魅力! 純文学作品で描かれるような、純粋かつ繊細な心の闇を、マンガという形で鮮烈に表現しています。 何を表現しているかというと、主人公の人格が乗り移る美少女の「表面上からは見えない葛藤」、もっと言えば「自分がいない感覚」です。 人は誰でもある程度は他人からの期待に答えて生きているものですが、女子の、特に思春期のそれは程度が強すぎる。 しかも美人だとそれだけである種のパワーを持つので、周りの人間がパワーを利用するために勢力下に置こうとします。 だから美人は空気を読まなきゃいけない。安全に平和に暮らすためには、強者の庇護下にいなければいけない。 しかしそれはずっと強者の要望に答えるということでもあります。 「ニコニコしていろ」「強く主張するな」 それを受け入れるうちに、そこに「自分がいない」と感じるようになる。 少女の心に気づいた主人公は何を思い、何をするのか? 少女は自分を取り戻すことができたのか? かつて、息苦しい学校の空気を必死に読みながら生きていた、全ての人におすすめしたい作品です。

2019年 11月 04日

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