3行でわかる少女ファイト
主人公の大石練は大好きだったバレー選手の姉をなくして、逃げるようにバレーに打ち込むが、チームメイトと軋轢が生まれてしまう
狂犬と呼ばれるほど周りが見えなくなりすぎて、疎外されるトラウマがあった。進学した黒曜谷高校のメンバーとはどうなるのか。
スポ根、友情、青春!すべてが入った熱い高校バレーマンガです!
作品概要
『少女ファイト』は、日本橋ヨヲコ先生による高校バレーボールを題材にした作品です。
『イブニング』にて2006年2月より連載開始。
あらすじ
バレーボールの名門、白雲山学園中等部に在籍する大石練は小学生時代に、名バレーボールプレーヤーだった当時高校生だった姉大石真理を交通事故で亡くしてしまいます。
悲しみを振り払うようにバレーボールに打ち込んだ結果、無理な練習にチームメイトを付き合わせ、小学時代は狂犬と恐れられた練でしたが、ある出来事をきっかけに中学では自分の心と実力を押し殺し、目立たないようベンチ要因として過ごしていました。
中学でも自暴自棄になりかけ、姉の墓前で泣きじゃくる練の前に、真理の高校時代のチームメイトであり、黒曜谷高校監督を務める陣内笛子が現れ、自身のチームに練をスカウトします。
生き方に迷い、屈折した人間達が集まり、バレーボールというスポーツを通して再生していく物語です。
登場人物紹介
大石練(おおいしねり)
黒曜谷高校1年。圧倒的なバレーボールセンスを持ちながらも、姉を亡くして以降、人間関係がうまく構築できず悩み苦しみます。
作中では大きな挫折や苦しみを経験した練が、様々な人達と関わっていく中で少しずつ変わっていく様が丁寧に描かれています。
小田切学
黒曜谷高校1年。練の良き理解者であり、チームの精神的支柱。
小学生時代太っていてイジメられていたところを練に助けてもらったことがあり、当時から練に憧れを抱いていました。
バレーボールは完全な初心者でしたが、陣内監督の言葉で入部を決意します。
人の心に寄り添える優しさと、芯の強さを併せ持つ選手です。作中でも特に印象的な名言を数多く残しています。
式島滋(しきしましげる)
黒曜谷高校2年生。練の幼馴染で、いつも冷静で周囲からの信頼も厚い男です。
黒曜谷高校男子バレーボール部に所属し、セッターポジションを務めていましたが、1年時の春高バレー全国大会決勝戦を最後にバレー部を引退し、女子バレー部のトレーナーとなります。
実家はプロアスリートが来店するほど有名な式島接骨院を営んでいます。遺伝性の目の重い病気を患っています。
普段は冷静だが練のことになるといてもたってもいられず強引な行動に出ることも。
式島未散(しきしまみちる)
黒曜谷高校1年生であり、式島滋の弟。ポジションは兄と同じくセッターだが、性格は兄弟で正反対で、非常に奔放な性格。中学時代はほとんど学校に行かず、出ずっぱりの不登校児でした。
志望校すら決まっていなかったタイミングで黒曜谷高校からのバレー推薦が届いたことがきっかけで、黒曜谷高校バレー部への入部を決めます。
延友厚子(のぶともあつこ)
黒曜谷高校1年、ポジションはレフト。男勝りな性格で見た目も男っぽい。初めの頃は小学時代に対戦し完敗した練に敵意を抱いていたが、チームメイトとして過ごす内に次第にわだかまりがなくなり、心を開いていきます。
幼馴染のナオとは親友であり、良く一緒にいます。
負けん気の強さと声でチームを盛り上げることも多い、気持ちを前面に出すタイプの選手です。
早坂ナオ
黒曜谷高校1年。器用に様々なポジションをこなせる選手。幼馴染の厚子とよく連んでいます。
あまり頭が回る方ではないが、主張の強いメンバーが多い黒曜谷の中ではバランス役であり、人に頼られると助けずにはいられない優しい一面も持っています。
長谷川留弥子(はせがわるみこ)
黒曜谷高校1年、ポジションはセンター。女優である母親譲りのルックスで、アイドル的人気を誇る。速攻や打点の高いブロックが光る一方、レシーブやオープンスパイクは苦手といった典型的なセンタータイプ。チーム内では伊丹と特に仲が良いようです。
父親の親友でありマンガ家の堺田町蔵に溢れんばかりの好意を抱いています。
過去のトラウマで「あきらめろ」という言葉を聞くと逆上します。
伊丹志乃(いたみしの)
黒曜谷高校1年。ポジションはセッター志望で、運動神経に優れ、全てのプレーの能力値が高いオールラウンドプレーヤー。勝気な性格故に周囲への当たりも強くなってしまいがち。
母方の祖父が関西でも有名なヤクザであり、中学時代はヤクザの子供と呼ばれたり、八百長疑惑をかけられたりなど辛い思いをしていました。
ルミ子と仲が良く、良く一緒につるんでいるシーンが見受けられます。
犬神鏡子(いぬがみきょうこ)
黒曜谷高校2年生。ポジションはセッターで、女子バレー部のキャプテンを務める。マイペースな性格で、どこか芸人のようにふざけて振る舞うことも多いが、後輩の面倒見は非常によく、信頼されている。母親は黒曜谷高校の理事長を務めている犬神家のお嬢様でもあります。
幼少期からの虚弱体質で、喘息を患っており、試合中、フルタイム全力でプレーすることは難しく、要所要所での出場に止まっています。
セッターとしての技術は相当であり、1回犬神のトスアップを受けた練が犬神の身体を本気で労っているシーンからもその技術レベルの高さが伺えます。
鎌倉サラ
黒曜谷高校2年、ポジションはセンター。178センチの長身と、男性顔負けのイケメンルックスで女性ファンも多い選手です。切れ味鋭いクイック攻撃は「死神の鎌」と呼ばれるほど。
諸事情で母と共に犬神家にお世話になっており、犬神家の家事使用人として、鏡子の食事の世話など身の回りのことを受け持っている関係性もあり、鏡子のことを「お嬢」と呼んでいます。
蜂谷由佳(はちやゆか)
黒曜谷高校2年、ポジションはウイングスパイカー。鏡子、サラの同級生で、いつもボケをかます鏡子のツッコミ役でもあります。
チームの中でも一際どっしりと構えており、チームを落ち着かせる役割も担っています。「スズメ蜂」と評されるほどの相手の腕が腫れ上がるような切れ味鋭いスパイクが武器。
チームで断食合宿を行って痩せたことで断食ダイエットに病みつきになっており、その時々の状況で体重が大きく変化しています。
陣内笛子(じんないふえこ)
黒曜谷高校女子バレーボール部監督。黒曜谷女子バレーOBで、真理と同級生のチームメイトでした。
真理を交通事故で亡くした際に一緒におり、自身も大怪我を負うも、無理して翌日の試合に強行出場し、その試合が原因で選手生命を絶たれます。
練達を慈しむ想いは誰よりも強く、自身の経験を元に生徒達に放たれる言葉は心に刺さるものが多いです。
バレーボールの強豪校でありライバルである白雲山高校の別所監督と以前交際していた過去を持ちます。
由良木政子(ゆらぎまさこ)
黒曜谷高校女子バレー部の臨時コーチ。元黒曜谷高校OBで真理や笛子と同級生の春高優勝メンバーの1人。ポジションはセンター。プロリーグの選手だが腰を痛め、一時的に黒曜谷のコーチとして活動しています。
黒曜谷高校男子バレー部の由良木龍馬の姉で、そっくりな顔と髪型をしています。
実家は寿司屋を営んでおり、政子自身が寿司を握る描写も作中では描かれています。
大石真理
練の姉であり、将来を嘱望されたバレーボーラーだったが、春の高校バレー全国大会決勝の前日に交通事故に遭い命を落としてしまいます。
決して他人を否定せず、あいまいさすらも愛し、その独特な空気感とスペシャルなプレーでチームメイトからもオンリーワンの存在として愛されていました。
生前はバレーボールを「こんなに溶け合えるスポーツ、他にはない」と評していました。
田上繭(たがみまゆ)
黒曜谷高校春高優勝世代のレギュラーで、笛子や政子と同級生。ポジションはミドルブロッカー。全日本の代表選手。
浮世離れした性格で、オリンピックでメダルを取ったらこの世で何もやることがないから死ぬことを練に宣言しています。
高校時代から同級生のチームメイト、村上環と事あるごとにぶつかっていたが、それは環の実力を認めているから故でもあります。
村上環(むらかみたまき)
黒曜谷OBで春高優勝世代のレギュラー。ポジションはレフト。高校時代から田上といつも言い合っています。
生活態度がだらしないなど、自堕落なところもあるが人当たりがよく、スッキリとした性格で後輩からもとっつきやすい先輩といった風情です。
家業のスポーツ用品店であるムラカミスポーツの店員。
延友知花(のぶともちか)
黒曜谷OBで春高優勝世代のレギュラー。ポジションはライト。厚子の父親の再婚相手でもあります。
厚子にはひどく反抗的な態度を取られています。霊感がとても強く、墓前の真理の気持ちが心情を理解しているかのようなコメントも作中では見受けられます。
黒曜谷男子選手
千石雲海(せんごくうんかい)
黒曜谷高校3年、男子バレー部の主将でポジションはエーススパイカー。全日本ユースにも選出されるほどの名選手。
豪快で面倒見もよく、リーダーとして相応しい人格を持ち、後輩達からもいじられる、愛されるキャプテン。鏡子やサラの幼馴染で、隠し続けてはいるがずっと鏡子に特別な想いを抱いています。
由良木龍馬(ゆらぎりょうま)
黒曜谷高校2年で、滋の同級生。ポジションはセンター。滋の弟、未散の師匠とも言える存在で、普段はおちゃらけたキャラクターだが、締める時はしっかり締める。
同級生のサラのことが好きで、会うたびにラブコールを送っているが、中々振り向いてもらえない。
怖いものがなさそうな性格だが、姉の政子にだけは頭が上がらないようです。
三國智之(みくにともゆき)
黒曜谷高校1年。三國財閥の御曹司。端正なルックスと、中学バレーMVPの実力を併せ持つ。
よく言えば実直だが、天然な性格でどこか世間ずれしているところがあります。
三國広之(みくにひろゆき)
智之の弟。開布中学3年生。女の子と間違えるような整った顔立ち。爽やかに振るまう裏で腹黒さが渦巻くキャラクター。
自分は汚れ役に徹してでも兄を立てようとする、財閥という特殊な環境ならでの兄弟愛が感じられるシーンも作中では垣間見られます。
ライバルチームの選手達
白雲山高校
中高一貫の私立女子校で、中等部時代は練も所属していました。
唯隆子(ゆいたかこ)
高等部1年生。主なポジションはオポジット(セッター対角)。かつて狂犬と言われた練にチームで1人だけついていけた程のバレーセンスの持ち主。
180cmを超える長身。実力はいうまでもないが、調子のムラが激しい一面も。
本人は未散の恋人だと本人は言っているが、それには過去のある出来事がきっかけとなっている。
蜂谷千代(はちやちよ)
高等部1年。黒曜谷高校の蜂谷由佳とは従兄弟。練をかなりライバル視している。
由良木政子の大ファンで何気に髪型も真似ていたりします。
京極小雪(きょうごくこゆき)
高等部1年。ポジションはレフト。中等部時代から抜群のルックスでアイドル的人気を博しています。
当時からメディアの取材も多かったが、自分の人気に実力が伴っていないことを自覚して悩んでいました。
練と分かり合えないまま別れてしまったことを後悔しています。
朱雀高校
全国的に有名な強豪校の1つ。黒曜谷高校に春高決勝で大差で敗れた過去を持ちます。
寺沼理香 (てらぬまりか)
高等部2年生。朱雀のキャプテン。中学時代の膝の怪我がきっかけで挫折し、自暴自棄になり一時期ヤンキーだったという異色の経歴を持つが、朱雀の槌家監督によってスカウトされ、再びバレーボールの世界に戻ってきました。
真っ直ぐな性格で、曲がったことが大嫌い。誰に対しても正面から向き合うが故に曲解されてしまうことも多い選手です。
中学時代に厚子と奈緒を助けたことがあり、2人からは厚い信頼を得ている。
有栖川幾重(ありすがわいくえ)
高等部2年生。ポジションはセッター。有栖川家という高貴な家柄の娘。バレーボールを愛し、試合中もよりバレーボールを愛している方を勝たせてしまう性格だが、セッターとしての技術は高く、打てれば必ず決まるピンポイントなトス回しを見せます。
理香とは唯一無二の親友同士で、理香を信頼し、愛しすぎている故に酷使してしまうトスを放つ、非常に監督泣かせなキャラクター。
完蛇田しえ(かんだたしえ)
高等部1年。ロングのツインテールが印象的。試合や練習に集中せず、よく寺沼から怒りを買っています。
相手のプレーを模倣することが得意。甘えん坊だがバレーセンスは高い。黒曜谷高校との1戦を通して大きく成長します。
槌家監督
朱雀高校の監督でありサラの父親。アルコールに溺れた過去を持つが、かつては全日本の監督を務めたほどの名監督でした。
突出した選手1人に負担をかけないよう、選手の能力を均一にする指導法を取っています。
名言
作中の全てが名言と言っても過言ではない本作品。厳選に厳選した3名言をお届けします。
お前がそう思うんならそうなんだろう
お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中ではな。
本当の想いに蓋をして、自分だけの思い込みで物事を捉えてはいないか。作中でも最も有名な名言と言えますね。
「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」の元ネタは?
私が自分で傷ついたって認めない限り
私が自分で傷ついたって認めない限り、誰も私を傷つけられないわ
誰に何を言われても、確たる自分を持ってさえいれば、誰も自分を傷つけることなんてできない。辛い経験をしてきた志乃だからこそ言える言葉なのでしょうね。
どうにもならない他人の気持ちは諦めて
どうにもならない他人の気持ちはあきらめて、どうにかなる自分の気持ちだけ変えませんか?少しずつでいいんで。
変えられないものをどうこうしようと嘆くより、自分の心だけなら自分の力で変えることができる。それでいいんだよ、と優しく諭してくれる小田切学の言葉に救われます。
感情をコントロールしたい時に見たい 『少女ファイト』の名台詞シーン10コマ
掲載誌
『イブニング』2006年2月号より連載。
受賞歴
第13回(平成21年度)文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品。
作者紹介
作者の日本橋ヨヲコ(にほんばしよをこ)先生は香川県出身です。
1996年に『爆弾とワタシ』で第34回ちばてつや賞を受賞しました。
代表作に『プラスチック解体高校』『極東学園天国』『G戦場ヘヴンズドア』
があり、いずれも学園、高校を舞台にした作品です。
作品の魅力
戦いの舞台に上がる全ての人間を、救う物語
本作品の数あるうちの魅力の1つが、何かしらの葛藤を抱えた少女達が悩み苦しみながらも戦いの舞台に上がり、試合を通じて救われていく様が丁寧に描かれている点です。
バレーボールという1スポーツの垣根を越え、人間ドラマとして非常に見応えのある骨太な展開に心を鷲掴みされます。
誰もが挫折し心折れかけた時に本作品の、自分の足で立ち上がっていこうとするキャラクター達の姿に読者自身が救われます。
過去作品とリンクするキャラクターが胸熱
日本橋ヨヲコ先生の過去作品である『G戦場ヘヴンズドア』に登場するキャラクターが登場し、世界観がリンクしている点もファンには堪らない魅力です。
堺田町蔵
「エドガワ排球団」という作品内での大人気バレーボールマンガの作者。黒曜谷高校バレー部に所属する長谷川留弥子に結婚をせがまれています。前作『G戦場ヘヴンズドア』の主人公の1人。
長谷川鉄男
長谷川留弥子の父親でありマンガ編集者。町蔵の担当編集者として「エドガワ排球団」を、掲載誌である少年ファイトの看板作品にまで押し上げる手腕を発揮しています。
前作『G戦場ヘヴンズドア』のもう1人の主人公。
長谷川久美子
長谷川留弥子の母。職業は女優。女優名は「組子」。前作『G戦場ヘヴンズドア』のヒロイン的存在であり、久美子自身も有望なバレーボール選手だったが、手首の怪我で引退した過去を持ちます。
現実のバレーボール選手が作品に登場!
2018年、2019年開催開催のV.LEAGUE WOMENオールスターゲームで、副賞「少女ファイト賞」が贈呈され、受賞選手には本作への登場権が贈られました。
2018年受賞の佐藤美弥選手、2019年受賞の栗原恵さん(2019年6月引退)がそれぞれキャラクターとして作中に登場されました。
佐藤美弥選手
1990年3月7日生まれ。2010年4月に全日本メンバーに初招集された日本代表経験を持つセッター。
作者の日本橋ヨヲコ先生曰くトス力がカンストした小田切学とのこと。
栗原恵さん
1984年7月31日生まれ。日本の元女子プロバレーボーラー。187cmの長身と華麗なスパイク技術で高校時代から注目を集め、2001年に日本代表に初選出されました。
プリンセス・メグの愛称でも知られ、現役時代は怪我との戦いが続くも何度でも不死鳥のように蘇る姿はファンの脳裏に強く焼き付いている、記録にも記憶にも残る名選手です。
メディアミックス
2009年1月ドラマCD化(第5巻特装版特典)。
2009年10月OAD化(第6巻特装版特典)。