東京 (28)
「この世は不平等だ」 「持って生まれた才能を、使うことも許されない」 「才能を使う機会は、自力でもぎ取るしかない」 「たとえ誰かを犠牲にしてでも」 そんな覚悟と執念がページから滲み出る作品。 ーあらすじー ■伝説の名女優と呼ばれたその人には娘がいた。 ■娘は母譲りの演技の才能と、母とは似ても似つかぬ醜い顔を持っていた。 ■美貌さえあれば大観衆を魅了するだろう才能も、その顔ゆえに陽の目を見ることはなかった。 ■ある日、娘は母の遺品に特別な力があることを知る。 ■「他人と顔を入れ替えられる」その遺品を使って、娘は自分の人生を塗り替えることを決めた。 天才と呼べるほどの才能が、自分にはどうしようもない欠損によって使えない悔しさ。 それを受け入れるしかないとわかっていながら、どうしても抑えきれない演劇への情熱。 誰かを不幸にしてでも、たくさんの人を騙してでも、世界にぶつけずにはいられない怒り。 人の信念や執念、心の裏側にじっとりと張り付くような感情。 そういった、「人を動かすことができるけれど、正しいとは言えない力」を鮮烈に描いた作品です。 登場人物それぞれがそれぞれにねじくれ曲がった心の芯を持っており、それが交差するストーリーも見事。 泥水の中を這い進みながら遠くの光を目指す、そんな物語を求める人におすすめします。
2019年 11月 11日