黒博物館 ゴーストアンドレディ

藤田和日郎 / 著

黒博物館 ゴーストアンドレディの好きなところ

「レンガ」 「暗闇」 「ろうそく」 「博物館」 「収集物」 「ミステリー」 「女学芸員」 「解き語り」 「歴史」 これらの単語に心が波打った人は、是非ともこの作品を読んでください。 決して後悔はさせません。 ーあらすじー ■ロンドン警視庁内にある秘密の場所。「黒博物館」と呼ばれるそこには、一般には公開されていない様々な捜査資料が眠っている。 ■学芸員の彼女はある見学者を迎えた。その者が見たいのは、幽霊が劇場に残した不思議な弾丸だという。 ■そして学芸員は知ることになる。その弾丸にまつわる物語を。「白衣の天使」と呼ばれた女性と、彼女を支え続けた幽霊の物語を。 まずストーリーの構成力がすごいです! 全2巻という短い間に、物語を盛り上げつつ伏線やキャラクターの想いもまとめて、綺麗に話を終わらせてくれます。 さすがとしか言いようのない仕事です。ブラボー! しかし僕が推したい魅力はそこではありません。 1番強く紹介したいのは、物語の始まりから終わりまでをずっと支える「暗闇と灯りの叙情性」です! まるで影絵のように、夜の街を照らすランタンのように、アニメのキービジュアルのように、世界を「切り取り」そしてその切り取られた部分からまた世界が「作られていく」感覚にワクワクします! どういうことかと言うと、暗闇の中にランプがポツンとある光景を想像してください。ランプとその周辺だけが、暗闇の中に浮かび上がると思うんです。 浮かび上がったのがアスファルトの地面だったら「街のどこかだな」と思うし、草原だったら「野山にいるのかな?」となる。 でも、それはあくまで想像です。本当のところは他の場所を照らすまでわかりません。 逆に言えば、照らし出す場所を変えると暗闇の中の想像の世界は全く違うものになります。 たとえ平凡な街にいたとしても、工事現場のガレキにライトを当てて「僕はディストピアな世界にいるんだ」と想像することもできるんです。 そういう意味では、暗闇とランプと想像力さえあれば、世界を切り取りそして作り変えることができます。 暗闇の中の灯りには、そんな情緒的でロマンチックな力がある。 その「暗闇と灯りの力」が、物語全体に行き渡っているのがこの作品です。 歴史や世界という暗闇の中の、どこを灯りで浮かび上がらせるのか? どの時代を、どの事件を、誰を、どの行動を、どの想いを、どう切り取りそしてどんな全体像を想像するのか? 学芸員が知る物語は、世界や歴史の一端を照らし出してくれる。 浮かび上がる範囲は大きくはないけれど、だからこそ人の想像をかき立てる。 歴史や事件というものは、決して全体像を完璧に掴むことはできない。 残ったものをどれだけ分析しようとも、必ず灯りの大きさに限界はある。 だからこそ、世界は、物語は、こんなにも面白い。 そんなことを思った作品でした。 暗闇とレンガとろうそくにロマンを感じる人におすすめです!

2019年 11月 17日

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