「人類と社会を悩む20選」発表!マンガから得る科学と人文の進化。ときわ荘からのトークイベントも開催!

2020年12月2日に発表された、2020年度「これも学習マンガだ!」。これに関連し、2015年〜2020年に選書された250作品の中からHITE-Mediaメンバーが選ぶ「人類と社会を悩む20選」が発表されました。

同時に、この選書に合わせて2020年12月18日(金)20:00〜21:30に、トキワ荘マンガミュージアムより「新しい生活様式(=ニューノーマル)に活きる学び」をテーマとしたトークイベントが無料配信されます。

この記事では、AIやロボットなどの情報技術が生活の隅々に浸透を始めている今、人々の暮らしや社会の変化、これから直面するであろう問題への理解を深める「新しい生活様式(=ニューノーマル)に活きる学び」に関連する今回選書された「人類と社会を悩む20選」の紹介と、近未来や社会的な問題を感じられるマンガ作品アルライター&アルに寄せられた各作品のレビューやコマを交えて紹介します。

「これも学習マンガだ!」とは

「これも学習マンガだ!」は、日本財団主催で2015年度からスタートした新しい世界を発見できるマンガや学びにつながるマンガを選出・発表し、作品を国内外の読者に届ける事業です。マンガの持つ「楽しさ」「分かりやすさ」「共感力」に着目し、社会をより良いものにしていくことを目的としています。マンガを通じて、「楽しみながら学ぶこと(=edutainment)」を継続的に推進することを目的としています。

2020年度より、一般社団法人マンガナイト主催の日本財団助成事業として推進されています。

※ edutainment とは?:education(教育)+ entertainment(娯楽)を合わせた言葉。

アルの記事でもご紹介しています。

HITE-Mediaとは

HITEとは、「人」や「社会」に対する理解を深めながら、どんな問題が起きるかを考え、人間を中心とした視点で新たな技術や制度を設計していく研究領域「人と情報のエコシステム(HITE-Human Infortmation Technology Ecosystem)」 の略称です。

HITE-Mediaは、このHITE領域のなかで、多様な領域の研究者やエンジニア、企業、 メディア関係者、クリエイターといった異分野の人々を交えて活発な議論の場を創出するプロジェクトです。

HITE-Media選書 人類と社会を悩む20選

AI・ロボットなどの情報テクノロジーが普及するいま、これからの人間・社会・環境はどう変化するのでしょうか。科学技術のみならず、哲学や社会学など「人文」の視点を取り入れていく研究領域HITE(人と情報のエコシステム)。今回、マンガを題材としながらこのHITEのメディア展開をはかるHITE-Mediaが選出した「人類と社会」をテーマとする20作品をご紹介します。

AIがどれだけ発展しても、私たち人間の悩みはつきないもの。国や時代を超えた人間のドラマあり、人類の行く末を見つめたり、いまこの瞬間の言葉にしがたいもどかしさを描いていたり、さらには科学という知られざる世界のトビラをひらいてくれたり。どれも愛と学びにあふれる作品セレクトです。

<人類と社会を悩む20選> ※作者肩書き及び敬称略

【科学・学習(4作品)】

タイトル

作者

作品概要

AIの遺電子

山田胡瓜

未来の情報を浴びる

人間、ヒューマノイド、ロボットが当たり前のように存在する近未来が舞台

はじめアルゴリズム

三原 和人

数学は楽しい!?

世界と対話する数学と、天才の思考回路を教えてくれる

プラネテス

幸村誠

宇宙開発の光と影

“宇宙ゴミ(デブリ)回収屋”の視点で、等身大の近未来を考える

もやしもん

石川雅之

かもす(発酵、腐敗させるの意)

菌・ウイルスに関わる農業大学の学生生活を描いた青春群像劇

1話完結型のなのですが、毎回の終わり方に余白があるというか、読者に想像させる締め方がとても心地よいです。作品全体として明確な答えを提示するというよりは、色々な答えの中から選択をする大切さを感じました。絵柄もスッキリしており、テンポ良く読み進められるところも良いです!


AIの遺電子』シリーズページ内「好きなところ」みやおさんの投稿より

K aijin M

不安や恐怖と向き合うことで新たな発見する快楽の追求。 イライラだったり漠然としたモヤモヤは大事に思考した方が気持ちが良くなる。

プラネテス

おこめ

お酒の話から人間の話に発展しているところがおもしろいです。 #興味深いコマ

もやしもん

【戦争(1作品)】

タイトル

作者

作品概要

アドルフに告ぐ

手塚治虫

ナチスとドイツ人と日本人

ヒトラーの秘密文書をめぐりアドルフたちは時代の奔流へ

【芸術(2作品)】

タイトル

作者

作品概要

アルテ

大久保圭

男女格差のある世界で画家を目指す少女・アルテの物語

16世紀初頭のフィレンツェの芸術のト世界を描く

へうげもの

山田芳裕

「槍よりお茶が好き」な武将?!

戦国時代、自分の趣味によって出世した古田織部の物語

戦国大名の古田織部が主人公で、茶道を中心に日本の芸術文化を描いた作品。 登場する茶器などを実際に見たくなり、おもわず美術館巡りをしてしまいます。 本当にそうかも?と思ってしまう歴史解釈も面白いです。


へうげもの』シリーズページ内「好きなところ」shinji okuyamaさんの投稿より

【歴史(4作品)】

タイトル

作者

作品概要

暗黒神話

諸星大二郎

ホントにそれって“あり得ない”?

日本の太古の謎を独特の切り口で解明していく歴史SFマンガ

大奥

よしながふみ

“逆転”した世界で明らかになるもの

江戸時代、実は男女の役割が逆転していたとしたら…?

チェーザレ 破壊の創造者

惣領冬実

チェーザレとは何者だったのか?

綿密な歴史分析に裏付けられた世界史大ロマン

宗像教授伝奇考

星野之宣

浦島太郎はホントにいた?

民俗学者が日本古来の昔話や伝説を次々に解き明かしていく

大奥の男女が逆だったら、、、という話なのですが、壮大な歴史のIfになっており、「江戸時代、本当に男性の数が少なかったのでは」と思えるくらい、リアルな描写です。 本当にすごい歴史マンガ!


大奥』シリーズページ内「好きなところ」けんすうさんの投稿より

【多様性(1作品)】

タイトル

作者

作品概要

違国日記

ヤマシタトモコ

時にはわかり合えるし、わかり合えなくてもいい

35歳の少女小説家と、姉の遺児である女子中学生二人の同居生活

大人になったら自然に大人になるのかと思ってたけど、大人になっても昔のトラウマ引きずるし傷付く。でも大人のフリしないといけない社会。だから大人のフリしなくて良い居場所として、友達って必要なんだ。そんなこと思った。


違国日記』シリーズページ内「好きなところ」Latchさんの投稿より

【生命と世界(6作品)】

タイトル

作者

作品概要

イティハーサ

水樹和佳子

「存在とは?」を語る異色作

神話以前の超古代の魂たちの揺らぎを描く“哲学マンガ”

イムリ

三宅乱丈

双子の兄弟と2つの文明

いったい世界はどうあるべきなのか。あなたならどう考える?

風の谷のナウシカ

宮崎駿

自然と共存する方法とは

アニメでは描き切れなかった深い自然への洞察とナウシカの運命

寄生獣

岩明均

形とは何?生命とは何?

人間に寄生し、他の人間を殺す寄生獣と人間との壮絶な戦い

銀河の死なない子供たちへ

施川 ユウキ

生とは、死とは。永遠とは、一瞬とは。

人類が滅んだ未来で、無限の時間を生きる子どもたちを描く

透明なゆりかご

沖田×華

目をそらさないことから全ては始まる

元・産婦人科看護師が描く、リアルな「命」のエピソード

寄生獣

SFホラーと見せかけて人間とは何かを問う社会派な作品。ミギーや寄生獣達の深い言葉がが印象的。「シンイチ…「悪魔」というのを本で調べたが、いちばんそれに近い生物は やはり人間だと思うぞ…。」連載当時の90年代は環境破壊が大きな社会問題だった。いまのSNS時代、寄生獣達はなんて評するだろうなあ。現代版、寄生獣読んでみたい。


寄生獣』シリーズページ内「好きなところ」Hisaさんの投稿より

生まれた時に死ぬことを運命付けられた”普通の人間”と、ある理由から成長することも死ぬことも許されなくなった2人の子供達の命の物語。 読み終えた後に感じる「当たり前のように過ぎ去る時間の愛おしさ」を是非感じて頂きたいです。


銀河の死なない子供たちへ』シリーズページ内「好きなところ」かねごんぬさんの投稿より


【生活(1作品)】

タイトル

作者

作品概要

ミステリと言う勿れ

田村由美

角度を変えればガラリと変わる

日常の「当たり前」を覆し、まっすぐに本質を射抜く主人公

「真実は人の数だけあるんですよ」 一巻に登場するこのセリフ。 作者はきっとこの言葉を すごく大切に思ってるんだろうなぁ。 作中で出てくる事件は どれも純粋な心が歪んでしまって起きたもの。 一見冴えない大学生の主人公は そんな事件を起こしてしまった小さな心の機微に ふんわりと気づいて 優しい考え方でふんわり救ってしまう。 どんな人にも真実があって、 でもそれを理解しあうことが難しくて、 争いは起きてしまう。 だけど理解できると こんなにも人に優しくなれるんだと。 誹謗中傷当たり前の現代において、 一度は読んでいて欲しいマンガだと感じます。


ミステリと言う勿れ』シリーズページ内「好きなところ」たらこさんの投稿より

【職業(1作品)】

タイトル

作者

作品概要

ブラックジャックによろしく

佐藤秀峰

医療とはなにか。命とはなにか。

答えのない世界に体当たりでぶつかる研修医の葛藤

ブラックジャックによろしく(4) を全世界の大人に読んで欲しい。 何年かぶりに読んで、また、むせび泣く。 自分が初めて親になる一月前の話。 親になる実感が全然沸いてこなくて、これでいいのだろうかと思って、ふと学生時代に読んだ「ダウン症の子の話」を思い出し、この一冊だけ買いなおしました。 漫画の世界の話だから・・・と思って一線を引きながら読んでいた学生の頃とは違い、 ――もし五体満足で生まれてこなかったら が一カ月先の未来にあるかもしれない。そう思うと途中から急に怖くなって、 あなたに覚悟はあるの? えっ、どうして当然のように自分と同じ形の子どもが生まれてくると思ってるの? ねぇ、大丈夫? ”今”の全部捨てられる? 読みす進めれば進めるほど、そんな問いが降りかかってきて。 でも、この話の先に答えがあった。 もし五体満足で生まれなくても。 今はつかえることなく自分の口でそれが言える。 このマンガを読んで、揺るぎない何かがそのとき自分の中に生まれた気がした。


ブラックジャックによろしく』シリーズページ内「好きなところ」あひろてさんの投稿より

イベント概要

  • 日 時:2020年12月18日(金) 配信時間20:00~21:30

  • 配信会場:豊島区立トキワ荘マンガミュージアム

  • テ ー マ:各々の専門分野から語る「学習マンガ」5選と、マンガの持つ力(科学・未来・情報技術の未来について、マンガをどう活用できるのか)

※無料でどなたでもご覧いただけます。

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