新型コロナウイルスの蔓延を中心に、様々なことがあった激動の2020年。ステイホームでの時間を余儀なくされた一方で、そのおかげでたくさんの素敵なマンガに出会えたと考えると決して悪くない1年であったようにも思います。
今回はそんな今年出会ったマンガの中から、特に印象に残った10作をご紹介!自分の「好き」を再確認した作品から、自身の人生の価値観に影響を与えた作品まで、幅広くご紹介致します!
目次
- 『ブルーピリオド』
- 『応天の門』
- 『煙と蜜』
- 『来世は他人がいい』
- 『SPY×FAMILY』
- 『マイ・ブロークン・マリコ』
- 『薬屋のひとりごと』
- 『ここは今から倫理です。』
- 『BEASTERS』
- 『鬼滅の刃』
- 来年も素敵なマンガにたくさん出会えますように!
さらに見る
『ブルーピリオド』
今年読んだ作品の中でも特に影響を受けた作品の1つ。主人公・矢虎の向かう美術の世界だけでなく、音楽や文学など「上手さだけで優劣のつかない世界」で戦ったことのある人、今現在戦っている人にとっては非常に刺さる作品ではないでしょうか。
中でも、「好きな事をするのは、いつでも楽しいわけじゃない」という言葉に、痛烈に共感した人もきっと多いはず。嫌いになったという理由で投げ出せないからこそ、好きな事の中で感じる辛さや苦しさは、時に何よりも残酷に自身の心を切り刻む感情です。けれどその中でもそれを続けるのは、やはり好きだから。あるいはそれを失えば自身の存在意義が揺らぐほど、好きなことが自分の存在の大部分を占めるようになっているからなのです。
自分自身も文字で己を表現する生業となってようやく1年。まだまだ未熟な事は分かりきっていますが、矢虎の如く「私の言葉で全員殺す」という狂気を携えながら、自分の道を歩いて行こうと決意した1年でした。
『応天の門』
偉人・菅原道真と在原業平のバディが活躍する平安奇譚『応天の門』。元々いわゆる和モノマンガが好きで表紙の絵柄の美しさに惹かれて読み始めてみれば、面白くてあっという間に全巻読破してしまいました。ドラマ「MIU404」などにも描かれる、いわゆるバディものが好きな方にとっては好みドンピシャ間違いなしの一作です。
平安時代のバディと言えば、小説や映画で有名な『陰陽師』の安倍晴明と源博雅を想起する方も多いはず。この作品との大きな違いは、『応天の門』で巻き起こる事件はどこまでも人為的な物とされています。それ故に政権を巡る人々の因縁渦巻く人間模様や、その中で少年から青年として少しずつ内面の変化を遂げていく道真の成長も、ぜひ楽しんで頂きたいポイントの1つとなっています。
『煙と蜜』
『煙と蜜』の魅力は、やはりなんといっても許婚2人がゆっくりと愛を育んでいくその過程にあります。紳士で大人な文治が、十八も年の離れた姫子をきちんと一人前の女性として扱う姿勢。そして十八も年の離れた文治に釣り合う女性になろうと、必死に背伸びをして素敵な女性になろうと奮闘する姫子。2人のそのやりとりが、見ていてなんとも微笑ましい気持ちを呼び起こしてくれます。
【7月15日発売】『煙と蜜』第二集(著:長蔵ヒロコ)
18歳差の許嫁、姫子と文治。
3年後に入籍を控え、姫子は「文治に見合う大人の女性になりたい」といじらしい悩みを明かす。
大正時代の純愛物語、待望の第二集!
今巻は、煙草をくゆらせる文治の雅な姿も必見。 pic.twitter.com/tcZpaegPNn— ハルタ (@hartamanga) July 11, 2020
既刊は現在まだ2巻。日々ゆっくりと愛を育む2人がなぜ出会ったのか、どうして許婚関係を結ぶこととなったのか。物語の根幹となる部分が現状まだ一切明かされていない、という点。それもまた、この物語がこれからまだまだ面白くなっていくであろうポイントの1つなのではないかと思います!
『来世は他人がいい』
極道ラブロマンスマンガ『来世は他人がいい』。私を含め大勢の方がこの作品をベストに推す理由には、主人公の吉乃がなんと言っても格好いい!という思いもきっと大きいことでしょう。極道の家に育ちながらも、できる限り普通の女子高生として生きていきたい吉乃。私たち一般市民と限りなく近い感性を持ちながらも、いざという時はヤクザ者の片鱗が垣間見える彼女のギャップも大きな魅力です。
しかしその主張は決して阿漕なものではなく、いつでも彼女自身が大切にしているものを守りぬく為の芯の通った行動。男女問わず惹かれる方も多い、意志の強さを持った「凛とした女性像」。それが描かれているからこそ、多くの人が彼女に、そしてこの作品に面白さを感じるのでしょう。
『SPY×FAMILY』
不思議な偽物の家族を取り巻くドタバタ劇が描かれた『SPY×FAMILY』は、その人気を何よりも作品自体の発行部数や反響の多さがすでに証明している部分もあるでしょう。世代を問わず読めるポップでコメディ色の強い作品でありながらも、先の読めない展開で続きが気になってしまう。何よりあくまで偽物として作られた家族が、どんどんと本物に近づいていく過程。それを見守りながら彼らの家族としての生活が、これからどうなってしまうのか多くの人が気になっていることと思います。
何よりこの作品のマスコット的キャラである、アーニャの可愛さがツボにはまった!という方も多い様子。感情も表情も豊かである一方、持ち前の超能力で父と母が隠している秘密でさえも知ってしまうアーニャ。ある種最も複雑な状況に置かれている彼女が持ち前の明るさと子供らしさで、今後どのように振舞っていくのか。それが一番気になる!という方もきっと大勢いることでしょう。
『マイ・ブロークン・マリコ』
たったマンガの単行本1冊にも満たない物語でありながらも、多くの人の心に確かな爪痕を残していく、と話題になった『マイ・ブロークン・マリコ』。正直かなり評価の分かれる物語かもしれません。が、私はこの物語に出会う事ができて本当によかった、と思うタイプの人間です。作者の平庫ワカ先生は、この著作がデビュー作の単行本とのこと。現在今後が非常に楽しみとされているマンガ家さんの1人と言っても過言ではないでしょう。
己の身を心配して、誰かが掛けてくれた「自分を大切にしてね」という言葉。好意や心配、気遣いでくれた言葉だと分かっていても、その言葉に虚偽や偽善、虚無感を感じたことは。馬鹿じゃないの、自分を大切にすることになんて何の意味もないのに、という気持ちを抱いた事はありませんか。人生でたった一度きりでもこのような思いを感じたことのある方には、ぜひ読んで頂きたい作品ともなっています。
『薬屋のひとりごと』
ライトノベル原作のマンガ化として当初話題となった『薬屋のひとりごと』。美麗なイラストでその物語がより多くの人にここまで支持される作品となったのは、やはりひとえに原作の面白さありき、とも言えるでしょう。とある中世の東洋・後宮という舞台設定で繰り広げられる物語に興味を持った、という方もきっと多いはず。
可愛さ重視の本作が見たい!という方は、ねこクラゲ先生作画のビッグガンガン掲載版。より原作に近い物語を読みたい!という方は、倉田三ノ路先生作画のサンデーGX掲載版がおすすめ。どちらにもそれぞれの楽しさがあるマンガとなりますので、可能であればぜひ片方だけと言わず両方を。そして物語の続きが気になる方はぜひ、原作の小説も手に取って頂きたい作品です。
『ここは今から倫理です。』
2021年初頭に実写ドラマ化も決定した『ここは今から倫理です。』。この作品の魅力は、アンニュイな佇まいながらも生徒を導く力強さを持つ高柳先生のキャラクター。そして学生の時には気付くことができなくても、今だからこそ大事さを感じる「倫理」という授業の面白さの本質。それらが十二分に描かれている、というのが大きなポイントでしょう。
個人的なおすすめエピソードは、実際に高柳先生の授業を受講する生徒が現在進行形で受けている、いじめを主題とした最初で最後のディスカッション授業。この授業のエピソードを読んでいると、きっと多くの方の脳裏にはこんな言葉が過ぎるのではないでしょうか。正義の反対では悪ではなく、正義の反対は、また別の正義なのだ、と。
『BEASTERS』
その独創的な世界観と舞台設定で、今年1年を通して多くの人を魅了した『BEASTERS』。大勢に惜しまれながらも物語は最終回を迎えましたが、2021年初頭からはアニメ2期の放送も決定しており、まだまだ大勢を楽しませてくれる作品です。これだけ多くの人を惹きつける物語の核となるポイントは、登場する獣人たちがどこまでも私たちと同じ人間らしい心を持っている部分でしょう。
BEASTARS(ビースターズ)22巻が1/8に発売です。最後の表紙はやっぱりこの2匹だ!!🐺🐰🌟🌟いっぱいいっぱい描き下ろしたカバー下やおまけ漫画もお楽しみに。 pic.twitter.com/gnC0Xru5fi— 巴留🐺BEASTARS🆕1/8 (@itaparu99) December 8, 2020
普通の人間は1人たりとして登場しない、あくまで動物たちだけの世界。そんな世界を舞台とした物語でありながらも、その本質は自分たち人間の生きる世界とどこまでも同じです。だからこそ彼らが抱える悩みもまた、私たちに人間がどこか身に覚えのある内容なのです。主人公であるレゴシが迷い、苦しみ、もがきながらも前へと進んで行く姿。本作を読む全ての人が彼のその生き様を他人事でないと感じた結果が、現在の人気へと繋がっているのではないでしょうか。
『鬼滅の刃』
今年の顔と呼んでも差し支えない超人気作となった『鬼滅の刃』。人気絶頂の中連載が終了してはや半年、それでもまだまだ大勢を虜にし続けマンガとしての発行部数も伸ばし続ける、まさに文字通りバケモノ級の話題作です。今作が今ここまでの社会現象となっているのには、「どうにもならない現実の中、それでも前を向いて進み続けなければならない」という作品の主題を、新型コロナウイルスに怯えながら暮らす私たちもまた強い当事者意識を持って感じているから、というのもあるのでしょう。
現在まだまだ劇場版もロングランヒットを飛ばし続け、2021年2月には公式画集やファンブック2、そしてアニメイベント『鬼滅祭』2Daysも開催予定の『鬼滅の刃』(余談ですが筆者は年内にあと2回劇場に足を運ぶ予定です、通算乗車が10回近くなりそうです)。今からでも本作を楽しむのは遅くありません!ぜひ年末年始の連休の間に、気になる方はお手に取って頂ければと思います。
来年も素敵なマンガにたくさん出会えますように!
年の瀬を控えてなお、まだまだ社会情勢は予断を許さない状況が続いています。しかし引っ繰り返せば、それはお家でたくさんのマンガ作品に触れられる機会がまだまだ続いているということ!どんなピンチもチャンスに変えて、せっかくなら2021年もたくさんのマンガを読みながらご機嫌に過ごしていきましょう!