【マンガの面白さを知り尽くす4週間】時代が変わればマンガも変わる!これからのマンガ史に名を残す注目の最新作

去年の今頃、平成から令和へと新しい時代がスタートしました。

つい最近出来事のように感じますが、この一年間でたくさんの出来事が起こり私たちの価値観や日常を変えました。

日本で初めて開催されたラグビーのワールドカップでは日本初の8強に進出。スローガンの「ONE TEAM」は流行語大賞の年間大賞に選ばれるなど、改めて”チームワーク”の強さを実感した方も多いのではないでしょうか。

また、朝日新聞がジェンダー平等宣言を発表するなど、性や恋愛のダイバーシティについて考えさせられるシーンも増えました。そして、現在。新型コロナウイルスによる未曾有の事態に直面しています。

しかし変化とは、過去を押し流すのでは無く新たな潮流を生み出すトリガーです。そんな新しい時代と共に新たに生まれ、また変わるのは人や習慣だけではなく、時代の変化に何より敏感なマンガを始めとするカルチャーも影響を受けることは間違いありません

アルでは、4週に渡り王道恋愛クラシカルの切り口で「マンガって面白い!」をテーマに記事をお届けしてきました。

最終回となる今回は、これからのマンガ史に名を残すであろう「注目の最新作」をご紹介します。時代が変わればマンガの王道や恋愛も変わるはず。次に来る...言わば未来の名作をご紹介します。

ドラゴン桜2

当たり前だった日常が非日常になっていく中で、会おうと思えばいつでも会えた友人や恋人、家族とのコミュニケーションはオンラインに代わり、コロナウイルスの感染症対策によりソーシャルディスタンスと言う新たなマナーも生まれました。

私たちが非日常と感じている今の状態は、もしかしたら新しい時代の日常になるのかもしれません。

マンガで、これから来る未来を垣間見て下さい。

新時代の王道マンガ!主人公の共通点は〇〇を知っている人?!

不義理なことには真正面から立ち向かい、時に熱く、そして仲間内から一目置かれる人置かれるカリスマ的要素を持ち合わせている...。

今までの王道マンガの主人公にはそんな一種のスター性があったように感じます。

ですが、新時代の王道マンガの主人公は違います。才能も無く平凡だったり、私たちが未曾有の新型ウイルスに大きな不安を抱えて弱音を吐いてしまうように、同じように悩んでいるのです。

けれど、そんな"自分を受け入れた上で自分ならではの闘い方を知っている"それが新時代の王道マンガの主人公たちだと思うのです。

そんなニュータイプの主人公が出てくる王道マンガをご紹介します。

・東京卍リベンジャーズ / 和久井健先生

主人公・花垣タケミチは、不良だった中学時代に付き合っていた彼女・橘ヒナタが、悪党連合“東京卍會”に殺されたことをニュースで知る。ひょんなことから12年前の中学時代にタイムリープしたタケミチは、ヒナタを救うため全ての元凶となる暴走族チーム東京卍會で成り上がり未来を変えようとするが...?!ヤンキー×タイムリープと言う新感覚のサスペンスマンガです。

ヤンキーマンガで主役を張るなら異常にケンカが強かったり、頭がキレるくらいのカリスマ性を期待したいところですが、新時代の王道マンガの主人公は違います。

タケミチは、喧嘩は弱いしすぐ泣くというヘタレっぷり。ですが、喧嘩が強い屈強なヤンキーたちを引き込む魅力があり、喧嘩ではない強さを発揮してのし上がっていきます。

オレのダメな人生はキヨマサのせいだ。運が悪かった”そう思ってた。違う。全部自分のせいだ。一度負けたくらいで立ち向かわなかった。オレの弱さのせいだ。

自分の弱さを認めて立ち向かう姿にも胸を打たれます。

・ダンス・ダンス・ダンスール / 朝倉ジョージ先生

中学二年生の主人公・村尾潤平は、幼い頃にバレエに魅了され憧れを抱く。けれど、父の死をきっかけに「男らしくならねば」という気持ちに囚われバレエの道を諦めることに。その後、男らしさを極めるべく格闘技・ジークンドーを習い、クラスの人気者となった潤平だったが、ある日美少女・五代都が転校してきます。都にバレエの興味を見抜かれた順平は、彼女の誘いでバレエの道へと足を踏み入れるのですが、想像異常に激しくアツいバレエの世界が潤平を待ち受けます。

王道マンガに欠かせない”スポ根”要素。ダンスを題材にしたマンガは数多く存在しますが、その中でも本作は、男子中学生とバレエという珍しい組み合わせが目を引きます。

昨今では、日本の男性バレエダンサーの活躍が増えているものの、女性に比べてまだまだ少ないのも事実。主人公の潤平は、同級生からの心ない一言や「男らしい」と言う言葉に囚われ苦悩するのですが、本作はスポ根要素だけではなくジェンダーについて改めて考えされるところも魅力のひとつです。

また、スポ根マンガで最もアツくなるのは主人公の成長する過程。

潤平は全くのバレエ初心者ですが、圧倒的な努力と持ち前の表現力で驚くべき成長を遂げます。最初から完璧なのではなく、自分の持ち前のスキルと努力を掛け合わせて羽ばたいていく様子はまさに新時代の王道マンガの主人公です。

・アオアシ / 小林有吾先生、上野直彦先生

愛媛に暮らす主人公・青井葦人。持ち前のサッカーセンスを武器に試合では一人で活躍。弱小チームをチームを勝利に導いていました。そんな中、四国大会出場をかけた大事な試合でトラブルに見舞われ退場を余儀なくされます。葦人が不在のチームはもちろん敗退してしまいます。大きな挫折を経験した葦人の前に、東京の強豪Jクラブ「東京シティ・エスペリオン」のユースチーム監督・福田達也が現れます。葦人の才能にを見抜いた福田は、ユースチームのセレクションを受けることを勧めるのだが...?!

ユースを舞台にしているところや、サッカーの戦術やテクニックをロジカルに説明していると言うところが、今までのサッカーマンガにはない点で話題の本作。

そして、何より注目したいのが葦人の天賦の才能である「フィールドにいる全員の動きを俯瞰して見れる」能力。ワンマンプレイではなく、周りを俯瞰することでチームの信頼を得てやがてキーマンになっていく葦人。

個の時代と言われる昨今ですが、個の力を最大限に活かそうとすればするほどチームワークが問われるのです。特化した知識、技術を持つ人たちが、既存の枠組みに縛られずに目的に応じてチームを作る姿勢が求められます。チームメンバーを俯瞰してアクションを起こす葦人の姿は、スポーツのみならずこれからの時代を生きる私たちに求められる姿勢なのではないでしょうか。

新時代の恋愛マンガ!変わるものと変わらないこと

外出自粛の影響で、今までのような対面でのコミュニケーションができずオンラインによる恋愛へと移行する動きも増えていることでしょう。

オンライン合コン、オンラインデート、オンライン婚活...。新しい恋愛の形が生まれる一方で、恋愛や結婚に対する価値観も変化していくのではないでしょうか。そんなこれからの時代の恋愛を描いたマンガをご紹介します。

・ルポルタージュ / 売野機子先生

2033年の日本が舞台。恋愛と言う概念がマイノリティになり「飛ばし結婚」と言われるスピーディーかつ効率的な男女のパートナーシップが一般化されている近未来の物語です。そんな世界の象徴である「非・恋愛コミューン」と呼ばれるシェアハウスがテロリストに襲撃され多くの犠牲者が発生します。新聞記者である主人公・青枝聖は、テロ被害者のルポを書きながらマイノリティとなった恋愛に巻き込まれていきます。

現代を生きる私たちからすれば本作の設定は非日常に感じるかもしれません。ですが、恋愛をすることが必ずしも当たり前ではなく、しないという選択肢など恋愛のダイバーシティ(多様化)が進んでいる今、非・恋愛が日常になる日も近いのではないでしょうか。

本作からは、主人公の聖を中心に、今まで私たちが当たり前だと思っていた「恋愛」について疑問を投げかけているかのようなメッセージを感じます。

自分にとっての「恋愛」は何のかを改めて考えさせてくれるマンガです。

・タラレバ娘 シーズン2 / 東村アキコ先生

ドラマ化して話題となった『東京タラレバ娘』のシーズン2です。今回の主人公は、平成生まれのフリーター・廣田令菜。30歳を迎えた令菜は、彼氏はおろか夢や人生の目標もない日々を送っていました。けれど、元号が令和に変わったと同時に一念発起して、夢を探して奮闘することに!令和を生きる30〜40代の女性のリアルを描いた話題作です。

職場の先輩に誘われて行ったバーのオーナーに「君の夢は何ですか?」と言われたことをきっかけに、改めて自分の夢について考える令菜。既婚の友達や結婚を経験をしている両親の姿を思い出し、自分も結婚をすれば輝けるのではないかと考え令菜は婚活に奮闘します。

けれど、どんなに素敵な人とデートしても自分に自信が出ず前に進めません。それは、夢も希望もなく何となく過ごしていた自分が出てしまい、そんな自分に引けめを感じてしまうから...。

これは幸せ不幸せとかでなく私の人生の問題だ。私がこれからどう生きたいかって話だ。

女性にはいろんな形の幸せがあると思います。愛する人と結婚して一緒になること、自分のやりたいことに熱中すること...。しかしそこには、白馬の王子様や奇跡的な幸せを待つのではなく、自分の意志と目標に向かって突き進む力強さが必要なのだと私たちに教えてくれます。

自分がどう生きたいのかを模索する令菜には、これからどんな出会いが待ち受けているのでしょうか。

・九龍ジェネリックロマンス / 眉月じゅん先生

実写映画化されて話題になった『恋は雨上がりのように』の俊英先生の最新作です。香港にあった九龍城砦と呼ばれる城塞をモデルにした架空の世界を舞台に、働く30代の男女の恋愛模様を描きます。非日常なノスタルジー溢れる世界観で織りなす恋愛に、どこか懐かしさを覚える不思議な恋愛マンガです。

映画のような不思議な世界観に圧倒される本作。架空の異世界が舞台ですが、バトルが起きることもなく異星人も登場しません。そこには、不動産会社に勤める主人公・鯨井令子と工藤発の淡々とした日常と、大人の恋愛が描かれています

俺はこのなつかしいって感情は恋と同じだと思っている。

丁寧に読み進めると、過去と現在、そして未来が交差する仕掛けが散りばめられていてミステリー要素も感じられる作品なのですが、人が恋に落ちる時の言葉にできない感情を表したようなセリフに心を掴まれます。

時代や世界が変われば、恋愛や結婚に対する価値観は変化していくのかもしれません。けれど、”恋”と言う偶然のような奇跡には変わらないものがあるのかもしれない、と思わせてくれる作品です。

マンガ週刊誌の道をリードしてきた4大少年誌が送る、新時代の名作

今も昔もマンガ好きの心を掴んで離さない4大少年誌「週刊少年ジャンプ」「週刊少年サンデー」「週刊少年マガジン」「週刊少年チャンピオン」。第三週のテーマはクラシックでは、4大少年誌のルーツを辿りながら不朽の名作をご紹介してきました。

最後に、マンガ週刊誌の道をリードしてきた4大少年誌が送る、注目の最新作をご紹介します。

・週刊少年ジャンプ / チェンソーマン / 藤本タツキ先生

週刊少年ジャンプで連載中の『チェンソーマン』。

主人公・デンジと、チェンソーの悪魔・ポチタは悪魔を駆除する「デビルハンター」と呼ばれる

仕事で生計を立てている。ある日、デンジはヤクザに騙されゾンビによって殺されてしまいます。ポチタが自らの心臓を差し出すことでデンジは復活を遂げます。そんなデンジが手に入れたのは、心臓をくれた相棒ポチタのチェンソーの能力。亡き相棒の力を使い「チェンソーマン」となったデンジは、公安のデビルハンターに誘われ公安所属のデビルハンターになりデビルを狩る...!

デンジは人間らしい欲望が満たされるなら命懸けで闘います。そんなデンジの闘い方は、幼少期に貧しい暮らしをしていたり愛に飢えていたことが由来します。主人公らしい勢いの良さを持ち合わせた型破りなキャラクターですが、幼少期の経験から幸せのハードルが極端に低かったりするギャップは、今までにない新時代の主人公なのではないでしょうか。

・週刊少年サンデー / MAO / 高橋留美子先生

週刊少年サンデーで連載中の『MAO』は、あの日本を代表するマンガ家高橋留美子先生の新連載です。

幼い頃に一家全員が事故に巻き込まれるも奇跡的に、自分だけ助かったと言う過去を持つ主人公・菜花。中学三年になった彼女が再び事故現場を通ると、なぜか大正時代へタイムスリップ。 そこで出会った陰陽師の少年・摩緒に出会い菜花の身体に異変が...。

タイムスリップ×妖怪の怪奇ロマン。この作品の面白い所は現実の歴史軸の中でタイムスリップをする所。歴史を揺るがすあの大事件を前に菜花と摩緒はどうするのか...?そんな手に汗握る展開に目が離せません。また、主人公である菜花のプロフィールが非常にユニークで、何故か毎日「スムージー」と呼ぶ怪しい液体を飲んでいるのです。これも何かの伏線なのでしょうか?

・週刊少年マガジン / 不滅のあなた / 大今良時先生

週刊少年マガジンで連載中の"不死"をテーマにしたSF超大作『不滅のあなた』。主人公のフシは、不死身の肉体と物体の性質を写し取る能力を持ちます。フシを中心に彼を観察する存在や周囲の人物との出会いと別れを描いた作品です。

週刊少年マガジンの躍進を語る上で欠かせない「SFブーム」

マガジン躍進を語る上で欠かせないのが、「SFブーム」です。中でも代表的な作品が、1967年に連載を開始した『幻魔大戦』です。

そんな週刊少年マガジンのルーツとも言えるSFを描いた不滅のあなた』は、先の読めないストーリーはもちろん、キャラクターたちの感情の変化を繊細に描いているところが魅力的です。

・週刊少年チャンピオン / BEASTARS / 板垣巴留先生

週刊少年チャンピオンで連載中の『BEASTARS』は、ヒト科の動物がいない世界が舞台。肉食獣と草食獣が共存し、人間のように学校に通い勉強し部活をして恋もするが、食肉が重い罪に問われる世界。チェリートン学園の演劇部員でハイイロオオカミの主人公・レゴシは、繊細で優しい心の持ち主。ある日レゴシと同じ演劇部の部員であるアルパカのテムが何者かに食殺される事件が起き、レゴシが犯人だと疑われるのだが...

登場するキャラクターが全て動物という斬新な設定なのですが、人間社会との共通点が非常に多く、自身の所属するコミュニティに置き換えて読み進められるほど

また、作者である板垣巴留先生の父親は、同じく週刊少年チャンピオンで連載していた『グラップラー刃牙』シリーズの板垣恵介先生。

時代が変わればマンガも変わる

4週に渡ってお送りしてきた「マンガの面白さを知り尽くす4週間」

最終回となる今回は、これからのマンガ史に名を残すであろう、これからの注目作をご紹介しました。

ニュクスの角灯

自分たちが当たり前だと思っていた日常は永久的ではない。そんなことを身を持って実感した2020年。けれど、それは悲観することではなく、そこから生まれる新しい価値観や文化が次の時代のスタンダードになるのです。

時に笑いを、感動と感激を、誰かに寄り添う悲しみを、そして新しい考え方を私たちに教えてくれる「マンガ」。目に見えない、人の奥底に訴えかけるコンテンツだからこそ、いち早く新時代の価値観を察知して私たちに伝えてくれるのではないかと思います。

ぜひこの機会にこれからの注目作を手にとってみては?

👉第1回目「王道」:【マンガの面白さを知り尽くす4週間】 絶対に外せない外さない、王道マンガを探す旅

👉第2回目「恋愛」:【マンガの面白さを知り尽くす4週間】 わたしたちの必須栄養素、恋愛マンガに恋をする

👉第3回目「クラシック」:【マンガの面白さを知り尽くす4週間】 4大少年誌の歴史に学ぶ、マンガが歩みこれからも歩む道


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